老子小話 VOL 1155 (2022.12.31配信)

是以兵強則不勝、木強則折。

強大処下、柔弱処上。

(老子、第七十六章)

 

是を以って兵強ければ則ち勝たず、木強ければ則ち折る。

強大なるは下に処り、柔弱なるは上に処る。

 

今年最後の日となりました。

清水寺で発表された今年の漢字は、「戦」となりました。

ロシアのウクライナ侵攻が、この漢字を選ぶきっかけになりました。

今年最後の言葉は、戦を嫌う老子の言葉より選びました。

「それゆえ軍隊は堅固で強ければ、それを頼りとして勝てず、樹木は堅固で強ければ、折れてしまう。

ものごとはすべて、堅固で強いものは下位にあり、柔らかで弱弱しいものは上位にある。

老子は戦を嫌います。

力あるものはおのれを過信し、硬直した思考に陥る結果、勝つ事ができない。

自然に生えている樹木も、柳のように柔軟なものは折れにくく、堅固なものは折れやすい。

もっと身近にいうと、我々の体の血管も、硬くなるともろくなり、血液の流れが悪くなり動脈硬化を引き起こします。

反対に柔らかく弾力性のある血管は、血液を全身にスムーズに運ぶ。

樹木は水により生命を得ている。

水を失うと樹木は収縮し柔軟性を失い、大きな力が加わったとき折れやすくなる。

老子は、柔弱を支えるのは水と考える。

生命を支える水は、強大な潜在力(ポテンシャル)を具えている。

しかし、水は下方に向かって流れる。

つまり、強大なるは下位にある。

このように老子は自然の声に耳を傾ける。

ロシアの軍事侵攻を見てわかるように、ロシアはおのれの軍事力を過信し、自分勝手な言い訳をつけてウクライナに侵攻した。

最初は文化的な同一性を掲げて、次にネオナチ勢力のせん滅を掲げ、そしてNATOの介入と言い訳を並べた。

しかし、実際にやっていることは略奪と住民の殺りくだった。

今なお、電源施設の攻撃により住民の生命を脅かしている。

プーチンの硬直した脳は、ロシアを世界から孤立させ、破滅の道に導いている。

一方ウクライナは、独立国としての意志をロシアに示した。

軍事力ではロシアに及ばないが、外交力により世界から様々の援助を得て対抗している。

外交力が生きるのは、ウクライナの独立を守ろうとする強い意志を世界に向けて示したからだと思われます。

ウクライナにとって水とは、自然に恵まれた大地であり、その大地を守ろうとする国民の意志のようです。

ウクライナに一日も早く平和が訪れることを祈念し、老子の言葉を捧げます。

読者の方々には、この一年、TaoChatを支えていただき、どうもありがとうございます。

よいお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

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