老子小話 VOL 1154 (2022.12.24配信)

水問祖宗之徳沢、吾身所享者是。

当念其積累之難。

問子孫之福祉、吾身所貽者是。

要思其傾覆之易。

(菜根譚)

 

祖宗の徳沢を問わば、吾が身の享くる所のもの是なり。

当に其の積累の難きを念うべし。

子孫の福祉を問わば、吾が身の貽(のこ)す所のもの是なり。

其の傾覆の易きを思うことを要す。

 

今回の言葉は少々長いですが、歳の瀬に思い出す言葉であります。

菜根譚からいただきました。

高齢になると、あと何回新年を迎えられるだろうかと思うものです。

そんなとき、この言葉は身に沁みます。

「祖先の恩恵は何かと言えば、自分が現在受けている恩恵がそれである。

祖先が過去に積み重ねてきた苦労を思い起こすべきである。

また子孫の幸福は何かと言えば、自分が今残そうとする幸福がそれである。

将来の長い年月の間にそれが傾き覆りやすいことを考えるべきである。」

いま自分が曲がりなりにも衣食住に足りて生活できているのは、祖先の努力のお陰である。

日本という国を支えてきた先人の努力なしには今の自分はないわけです。

もっと身近では、オギャーと生まれ、様々なひとに支えられて今の自分があります。

自分を支えてくれたひとそれぞれもまた、先人の苦労に支えられてきた。

同じ事が自分の子孫にも言えるわけです。

今自分がやっていることが子孫の幸福につながるのかどうか、それを考えなくてはいけないと菜根譚は語る。

「子孫の福祉」という言葉が重く響きます。

いい意味でも悪い意味でも、今私たちが決断し子孫に残したものが、「子孫の福祉」を決定する。

決断が間違えば、いとも容易に「子孫の福祉」は傾き崩れていくと結びます。

年末になって政府は、原発方針を大きく変えました。

東日本大震災による福島第一原発事故以来、政府は、原発は安全性・採算性の観点で問題あるので原発依存度を減らす方針をとってきました。

それが突如、原則40年、最長20年延長可の方針をあらため、70年まで運転期間を延長しました。

さらに原発の増設は行なわないという方針も撤回し、増設ありとしました。

福島原発では、高レベル放射性廃棄物の最終処分地もまだ決まっていないにもかかわらず。

しかも、この方針転換のもとになった委員会では、圧倒的多数の原発支持者が集まり意見をまとめたようです。

放射能の問題は、長期にわたり残るもので、「子孫の福祉」を脅かす要因です。

福島で被災され故郷に戻れない方々は、一番身にしみていることだと思います。

確かに電力供給ひっ迫という課題はあると思いますが、余りにも安易な決断をしているようです。

電力を抑えるのなら、明る過ぎる東京の夜をもう少し暗くする努力とか、いろいろな手を打つ猶予があると思います。

子孫が大人になった時、放射性廃棄物を解決できない原発は増やして欲しくなかったということのないようにしなくてはなりません。

 

有無相生

 

 

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