老子小話 VOL 1150 (2022.11.26配信)

水因地而制流、兵因敵而制勝。

故兵無常勢、水無常形。

(孫子、虚実篇第六)

 

水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。

故に兵に常勢無く、水に常形無し。

 

カタールW杯において、日本は初戦でドイツに対し、歴史的な大勝利をあげました。

その戦いぶりは、孫子の「兵の形は水を象る」を思い出させました。

今回の言葉は、この言葉が書いてある孫子虚実篇からお届けします。

「水は地形に従って流れを定めるが、軍は敵の態勢に応じて勝利を制する。

故に軍には決まった態勢というものはなく、水には決まった形はない。」

サッカーの試合では、兵は選手であり兵の形は陣形になる。

水が高い所から低い所に流れるように、サッカーボールは守りの堅いところから弱いところに流れる。

陣形は固定化しておらず、攻める方は守りの手薄な所を狙ってボールを回す。

守る方はボールの動きに釣られて陣形の穴を作らないように守りを固める。

ボールは目まぐるしく動き、次第に守りの隙が少しずつ現われる。

最終的には、ゴールキーパーが撃たれたシュートをはじき返すことで救われる。

ドイツ戦では25本のシュートを浴びたが、1点に抑えた権田選手の活躍に負うところが大きい。

とはいっても、点を入れないと勝てなかったので、同点ゴールの堂安選手、逆転ゴールの浅野選手の活躍もあってのこと。

さらに彼らにボールをつなげた選手のお膳立ても素晴らしい。

もっと言えば、そういう選手起用を適時進めた森安監督の采配も見逃せない。

つまりは、ゴールに向かって水の流れを定めた全員の力の結集が実った姿を、ドイツ戦では味わう事ができました。

前半での敵の態勢を見て、後半に攻撃的な陣形に変えるべく、選手交代を行なった監督の狙いは的中しました。

まさに、「敵に因りて勝ちを制す」です。

サッカーでは、素早い状況判断が選手に求められます。

どこが守りの手薄かを判断してそこにボールを回しますが、オフサイドにならないようにボールを受ける選手との連携が取れていることが必要になる。

水の流れはある時は地を這うように動き、ある時は点と点を結び宙を飛び交うように動きます。

その流れを生みだすように陣形は、敵の態勢に応じて変化していく。

サッカーの試合を見ていると、孫子の兵法が現実の姿に映し出されているようです。

 

有無相生

 

お詫び:メルマガでは、逆転ゴールを遠藤選手と書きましたが、正しくは浅野選手です。あらためてお詫びいたします。

 

 

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