◆老子小話 VOL
1142 (2022.10.01配信)
和大怨必有餘怨。
安可以爲善。
(老子、第七十九章)
大怨を和すれば必ず余怨あり。
安(いずく)んぞ以って善と為すべけんや。
プーチンは、ウクライナ侵攻で不当に占拠した4州を一方的に併合し、ロシア領土としました。
プーチンは過去においてもクリミアを同じ手口で我が物にしました。
他人の家に無断で押し入って住みつき、自分の家だと宣言するようなものです。
このやり口は、プーチンに限ったことではなく、ロシアの手口といってよいでしょう。
太平洋戦争末期、日ソ中立条約を破棄して満州に侵攻し、ロシア領土としました。
併合の理由は、住民選挙による住民の意思の結果だとするものです。
しかし、兵士が銃をもって透明な投票箱につきそうという監視下での選挙ですから、選挙の正当性すらありません。
ロシアという大国がこういう茶番劇を使って、好き勝手に領土拡大するのを許していたら、世も終りです。
こういう状況を見ていて思い浮かべたのが、上の老子の言葉です。
「深刻な怨みごとを和解させてみても、必ず怨みはあとあとまで残る。どうしてそれが善い事だといえようか。」
ウクライナの側からみれば、ロシアが軍隊を送って各都市の住民を虐殺し、ミサイルで民間施設を破壊し、その上占拠した各州を不当に領土とすることは、屈辱の何ものでもありません。国際社会の常識から照らしてみても平和秩序への挑戦であり、ウクライナにとっての大怨だけでなく、ロシアに近接する国々、さらに全世界にとっての大怨です。
この暴挙を許し停戦に応じることは、ロシアの卑劣な手口を容認することであり、ロシアはまた別の国に対し侵攻を繰り返すことを認めることになる。
従って、ロシアの強制併合という深刻で屈辱的な怨みに和解すれば、必ず怨みはあとあとまで残るでしょう。
それだけでなく、ロシアは今までと同様に停戦協定を破棄して、さらなる領土拡大を図るでしょう。
ロシアに近接する国々は、ウクライナを明日のわが身と考えるのはいうまでもありません。
ロシアが卑劣なのは、核兵器を武器に世論を押さえ込もうという態度です。
日本に2回も原爆を落とした米国を名指しし、自国の安全を守るために使用するのはなぜ悪いのかと。
強制併合した4州への反撃は、ロシアに対する侵略としてみなし核兵器使用も辞さないという脅し。
大泥棒ロシアが、取締ってくる警官に対し逆ギレする姿です。
まさに、大怨に和する結果、大泥棒が図に乗る結果を生むのが、どうして善いことなのか?
プーチンに老子を唱えても無駄でしょうが、ロシアに対する世界が、彼の横暴に妥協しない姿が是非求められると思います。
それによりプーチンが権力の座から引き摺り下ろされるまで、辛抱するしかありません。
有無相生