老子小話 VOL 1134 (2022.08.06配信)

兵者不祥之器、非君子之器。

不得已而用之、恬淡爲上。勝而不美。

(老子、第三十一章)

 

兵は不祥の器にして、君子の器にあらず。

已むを得ずしてこれを用うれば、恬淡なるを上と為す。

勝ちて而も美ならず。

 

今日は広島原爆の日です。

平和祈念式典を見た後、この原稿を書きました。

松井市長が引用したトルストイの言葉、「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。

他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もあるのだ。」は、印象的でした。

今回の言葉は、老子から選びました。

「武器は不吉な道具である。君子が用いる道具ではない。

止むを得ずに用いる場合であっても、あっさりと使うのが一番である。

しかも勝ったとしても、りっぱなことではない。」

原爆の恐ろしさは、実際に体験してみないとわからない。

核兵器で威嚇する為政者自身が被爆体験すれば、決して用いようとは思わないはず。

老子はこの言葉のあとで、武器を用いることをりっぱなことだとすることは人殺しを楽しむことだという。

人殺しを楽しんでいるものに世界を支配できるはずはない。

プーチンのように、高性能の武器を開発して防御不可能だと言い張るのは、人殺しを楽しむことです。

そんな身勝手な輩に世界はうんざりする。

哀しいかな、トルストイはロシアの文豪ですが、その言葉を無にしているのが同じロシア人プーチンです。

中国の思想家老子の言葉を無にしているのは、同じ中国人習近平です。

老子の考えた武器は、今や核兵器に発展しました。

世界初で核兵器開発したアメリカは、どんな威力があるか人体で確かめたくなりました。

人体実験を日本で2回やりました。

決して、あっさりとは使いませんでした。

やはり、人殺しを楽しみました。

この点ではナチスのホロコーストと同じです。

ただ違うのは、戦勝国が行なったホロコーストなので、何かと言い訳が認められました。

核兵器禁止条約締結は核廃絶の最終形ですが、国家間の約束を簡単に破る国が存在する以上、そう簡単には実現しそうもない。

自分が約束を守っても、相手国が破るからです。

ウクライナは核兵器廃棄しましたが、ロシアは核兵器で脅しをかけています。

敵国に一度でも使えば、人類は破滅するという共通認識を核保有国の為政者は持つべきでしょう。

今日の平和祈念式典でグテーレス国連事務総長が述べたように、核保有国の「先制不使用」を約束することが先決のように思われます。

ロシアや北朝鮮の態度は、「先制使用」も辞さないと脅しをかけるものです。

国際社会でも人間社会でも、それ言っちゃおしまいだよという言葉があります。

それは人類の存在や個人の存在を根本から脅かす言葉です。

核の使用や殺意の意思表示の言葉です。

老子の言葉は、幾分弱弱しい不戦の言葉のように見えます。

しかし武器の本質を言いえており、人殺しの道具に尽きます。

止むを得ず使うにしても、防御目的にとどめるべきだという。

武器が核兵器の場合でも、「先制不使用」は当然である。

 

有無相生

 

 

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