◆老子小話 VOL
1133 (2022.07.30配信)
凡そ物は乗ずる有りて来る。
其の出でし者は是れ其の反える者なり。
(荀子、大略篇篇第二十七)
今回は、荀子の言葉です。
「およそ物事は何らかのきっかけがあってやってくるものである。
こちらから出たことはまたこちらへ還って来るものである。」
一言でいうと、因果応報です。
すべての結果には原因があり、自ら蒔いた種が自分に結果となって戻ってくる。
荀子はこの言葉のあとで、「君子は流言を消滅させ、貨色(財貨と女色)を遠ざける。発言にも気をつけ疑わしいことを口にしない。」という。
安倍首相の暗殺で明らかになってきた、政治家と旧統一教会との関係も、この言葉で解釈できます。
荀子は性悪説で有名で、「人の性は生まれながらにして利を好むことあり」というように、人間は生まれながら利益を追求する性質があるという。
政治家はその最たるものである。
旧統一教会のなしてきた不正に目をつぶり、彼らの無償の選挙協力や経済支援にすがりました。
官憲も、政治家への忖度あるいは政治家からの圧力により、その不正をおおごとにしませんでした。
唯一文科省が統一教会の名称変更を18年間拒絶してきましたが、安倍政権時代に突如受理されました。
利を好むという性質が、どんな結果を招きかねないのかを思い知るきっかけになったと思います。
東京五輪の五輪組織委員会元理事の収賄も、みなし公務員という立場でありながら、貨色を遠ざけるどころか擦り寄ってしまった。
日本社会は性善説で動いているので、怪しいことをしている人の行動を監視することをしない。
オウム事件での反省が、統一教会の名称変更の受理を拒絶する行為に結びついていたのが、政治家の力で覆ってしまった。
政治家のモラルのなさと意地汚さが見えてしまった今回の事件です。
臭いものにふたをしてきたのに、ある事件がきっかけになり、芋づる式に表に出てくる。
世界から見ると日本の病巣がくっきりと見えるのに、国内ではゆで蛙状態が続き、ある事件が起きて、おかしいことに気づき始め、あわてて対応する。
はっきりしていることは、すべての結果は自分に還って来ることです。
気をつけなければいけないのは、政治家だけでなく、国民ひとりひとりもそうです。
何気ない言葉が相手の心を傷つけ、信頼関係の喪失という結果が自分に還って来る。
因果応報は、人間社会で無事に生きていくために忘れてはならない言葉です。
それに気づくのは結果が出てしまった後ですが、死んでしまえば其の先はありません。
死というおおごとではないにせよ、日常のひょっと口に出てしまった言葉がおおごとに発展する可能性もあるので、慎重にならざるを得ません。
有無相生