老子小話 VOL 1129 (2022.07.02配信)

天之道其猶張弓與。

高者抑之、下者擧之。

有餘者損之、不足者補之。

(老子、第77章)

 

天の道はそれ猶お弓を張るがごときか。

高き者はこれを抑え、下き者はこれを挙ぐ。

余りある者はこれを損じ、足らざる者はこれを補う。

 

今回の言葉は、老子からいただきました。

道が行なう富の再配分を説明しています。

どこかの総理がいう「新しい資本主義」よりも、よほどわかりやすい言葉です。

「天の道は、弓に弦をかけて張るようなものである。

上の部分は下に引き下げ、下の部分は上に引き上げる。

弦の長さが長すぎれば短くし、足らなければ継ぎ足す。」

富の流れは、富める者から貧しい者へ再配分すべきという。

弓の上の部分は富める者の富であり、弓の下の部分は貧しい者の冨である。

弓のしなりは、富める者の富を引き下げ、貧しい者の富を引き上げることで生まれる。

弓のしなりが大きいほど矢は遠くへ飛ぶ。矢は国の成長力である。

弦の長さが、弓のしなりを決める。

弦が長すぎるとしなりは小さくなり、矢の勢いは減る。つまり成長力は無くなる。

富の再配分がなく格差が広がった結果、国の成長力が落ちた今の日本の姿である。

弦が短かすぎると、弓のしなりの範囲が減り、矢の勢いは減る。

再配分が行き過ぎて、富を求めて働く意欲が減退する結果、国の成長力がなくなった旧ソ連の姿である。

矢を遠くに飛ばすには適度な弦の長さの調整が必要になる。

天の道は、この調整をうまくやる。

自然界の食物連鎖は、生きるエネルギーの再配分をうまく行なっているプロセスです。

植物は光合成でからだの中に養分を蓄えます。それを草食動物が食べて、肉食動物が食べて、エネルギーの再配分が行なわれる。

動物が死ねば、死体を微生物が分解し、植物の養分になる。

自然界のすべての生き物が、富を分かち合いながら暮らしているわけです。

人間社会だけが、富の独占を平気で許していることになります。

自然界には、「自分さえよければ」という発想はない。

自分が生きているのは、周りの生き物のお陰であるという原理ですべてが動いている。

ウクライナ戦争を主導するプーチンさんに学んで欲しいのは、この老子の言葉です。

いやプーチンさんだけではなく、全世界の指導者に学んで欲しい言葉でしょう。

 

有無相生

 

 

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