◆老子小話 VOL
1129 (2022.07.02配信)
天之道其猶張弓與。
高者抑之、下者擧之。
有餘者損之、不足者補之。
(老子、第77章)
天の道はそれ猶お弓を張るがごときか。
高き者はこれを抑え、下き者はこれを挙ぐ。
余りある者はこれを損じ、足らざる者はこれを補う。
今回の言葉は、老子からいただきました。
道が行なう富の再配分を説明しています。
どこかの総理がいう「新しい資本主義」よりも、よほどわかりやすい言葉です。
「天の道は、弓に弦をかけて張るようなものである。
上の部分は下に引き下げ、下の部分は上に引き上げる。
弦の長さが長すぎれば短くし、足らなければ継ぎ足す。」
富の流れは、富める者から貧しい者へ再配分すべきという。
弓の上の部分は富める者の富であり、弓の下の部分は貧しい者の冨である。
弓のしなりは、富める者の富を引き下げ、貧しい者の富を引き上げることで生まれる。
弓のしなりが大きいほど矢は遠くへ飛ぶ。矢は国の成長力である。
弦の長さが、弓のしなりを決める。
弦が長すぎるとしなりは小さくなり、矢の勢いは減る。つまり成長力は無くなる。
富の再配分がなく格差が広がった結果、国の成長力が落ちた今の日本の姿である。
弦が短かすぎると、弓のしなりの範囲が減り、矢の勢いは減る。
再配分が行き過ぎて、富を求めて働く意欲が減退する結果、国の成長力がなくなった旧ソ連の姿である。
矢を遠くに飛ばすには適度な弦の長さの調整が必要になる。
天の道は、この調整をうまくやる。
自然界の食物連鎖は、生きるエネルギーの再配分をうまく行なっているプロセスです。
植物は光合成でからだの中に養分を蓄えます。それを草食動物が食べて、肉食動物が食べて、エネルギーの再配分が行なわれる。
動物が死ねば、死体を微生物が分解し、植物の養分になる。
自然界のすべての生き物が、富を分かち合いながら暮らしているわけです。
人間社会だけが、富の独占を平気で許していることになります。
自然界には、「自分さえよければ」という発想はない。
自分が生きているのは、周りの生き物のお陰であるという原理ですべてが動いている。
ウクライナ戦争を主導するプーチンさんに学んで欲しいのは、この老子の言葉です。
いやプーチンさんだけではなく、全世界の指導者に学んで欲しい言葉でしょう。
有無相生