◆老子小話 VOL
1128 (2022.06.25配信)
道は天地自然の物にして、人は之を行ふものなれば、天を敬するを目的とす。
天は人も我も、同一に愛し給ふゆゑ、我を愛する心を以て人を愛する也。
(西郷隆盛、「南州遺訓」)
今回の言葉は、西郷隆盛からいただきました。
大河ドラマ「西郷どん」で描かれたように、西郷さんは倒幕・維新を駆け抜け、公平無私を貫いたリーダーでした。
今の政界・財界のリーダーに欠けている人望にあふれています。
彼の言葉はぶれず、言葉通りの生き方を貫きとおした点がさらなる魅力になっています。
「道は天地自然の道理だから、人が道に従うならまず天を敬うことを目的にする。
天は他人も自分も平等に愛するのだから、自分を愛するように他人を愛することが大事である。」
荘子の万物斉同の教えと同じく、万物は天のもとに平等であるという考えを基本に置いています。
自分と他人の間に分け隔てはない。
道に従えば、自分を愛する心は同時に他人を愛する心となる。
西郷さんは、別の箇所で、「敬天愛人」を説く。
道を修めるためには克己、つまり己に克つことが大事になる。
人間は成功し名声をあげるようになると、自分を愛する心が生じ、身を慎んで天を敬う心が薄れてくる。
自身の延命のために、手段を選ばず、政敵を抹殺し、他国を侵略するなど、あらゆる暴挙に出る。
天を忘れ、己に克てなくなるとき、破滅の兆しが現われる。
西郷さんは、西南戦争で命を落としますが、政府の謀略により反逆者扱いされても、最期まで正と義を貫いた姿は遺訓という言葉に現われています。
ひとりの人間の生き方で感動を呼ぶのは、言葉と行動が死に至るまで一体となっている姿だと思います。
どんなに素晴らしい言葉を吐いても、策略に満ちた行動をとっていては、人望は集まりません。
有無相生