老子小話 VOL 1127 (2022.06.18配信)

人間の持つものの中で、自分自身に基礎をおかぬ力ほど不安定で、はかないものはない。

(ゲーテ)

 

岸田首相が、「新しい資本主義」というコンセプトを打ち出しました。

経済成長しても、富の分配がないので給料は上がらない。

分配なくして成長なしと言いつつ、過去20年間分配は実現されませんでした。

「新しい」かどうかは、実際に分配が実現された後に国民が評価して決まります。

経済低迷の根本は、政府も民間企業も、人材を大切にしてこなかった結果だと考えます。

人材に対する投資を軽視した結果、生産性の低下を招き、ますます賃金は抑えられるわけです。

アベノミクスの間に、賃金は世界5位から30位に転落しました。

こうして労働者自身も自分の価値を低く考え、自己投資をして自分の価値向上に励む気力を失っているのが現状でしょう。

今回は、ドイツの文学者ゲーテの言葉をお届けします。

政治は、国民の生活以上に企業を大切にする傾向にある。

従って、国民は政治に頼るわけにはいきません。

自分が払い続けた年金すら、政治のせいで減額される始末です。

選挙近くになると、与党の政治家は国民においしい人参を掲げますが、それも一時のことで実現されることはない。

国民が頼るべきは、自分自身に基礎を置く力だとゲーテはいう。

自分自身に基礎を置かない力は、例えば、自分の地位や肩書き、あるいは財力です。

能力もないのにそんな力に頼っていると、それを失うと同時に落ちぶれる。

実績もないのに当選した政治家がスキャンダルを起こし、国民から見放された事例は限りがありません。

自分自身に基礎を置く力は、体力でも、知力でも、話術でも、技能でも何でもよい。

裸一貫になっても、生き抜いていく力といってもよい。

その力さえあれば、取り敢えずは生きていける。

その力が自分の価値を決めると、ゲーテは言っているようです。

学校を出て就職して、企業が自分の価値を決めるという環境に慣れてしまうと、自分の価値は赤の他人が決めるものとつい思ってしまいます。

日本人の多くがそんな考えに陥っている。

自分自身がどう生きたいかを決め、それを実現するための力を自分で養うことの大切さがゲーテの言葉の意味だとに思えてきました。

 

有無相生

 

 

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