老子小話 VOL 1125 (2022.06.04配信)

大国者下流。

天下之交、天下之牝。

牝常以静勝牡。以静爲下。

(老子、第六十一章)

 

大国は下流なり。

天下の交、天下の牝なり。

牝は常に静を以って牡に勝つ。

静を以って下ることを為せばなり。

 

今回の言葉は老子です。

2000年以上も前の言葉ですが、今なお真理を語ります。

「大国は大河の下流である。

世界中のあらゆるものが集まって来る所であり、世界中がなびく牝(メス)である。

牝は常に静かにじっとしていながら牡(オス)に勝つ。

静寂を保ちながらへりくだっているからである。」

大国は力を誇示したがるもので、これを「動」という。

力によって小国を抑圧するので、小国の恨みは増していく。

老子が生きた春秋戦国時代は、大国秦は軍事力で小国に侵攻し、小国は同盟を組んで大国秦に対抗しようとする。

大国ロシアの小国ウクライナへの軍事侵攻と、周辺諸国からなるNATOのウクライナ援助は、春秋戦国時代の再現です。

小国同士が同盟を組んで大国の力の脅威に対抗するのが、合従策。

一方大国は、個々の小国と取引し同盟の分断を図る連衡策をとる。

ロシアへの経済制裁は合従策のひとつで、原油天然ガスの供給を止め、NATO諸国の経済不安をあおるのが連衡策のひとつとなっています。

昔も今も、人類は同じようなことを繰り返しています。

老子は、天下の平和は大国の振る舞いで決まるという。

本当に強いものは、大河の下流のごとく、静寂を保ちへりくだるのが一番という。

そうすれば、あらゆるものがそこに向かって集まり、なびいていくからだという。

力を持っていることは世界中の皆が認めるところであり、それを自慢せずに静かにへりくだっていることで、皆の尊敬が集まるからである。

老子には、メスがよく出てきます。

6章では、玄牝(げんぴん)が天地の根と呼ばれます。

メスは天地の根、つまり生命の泉を意味し、あらゆる生命を生み出すものと考えられます。

60章には、「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」といい、小魚を煮るように静かに形がくずれないように大国を治めるのがよいとされる。

核兵器という強力な兵器で脅しをかけるのはもってのほかというわけです。

ロシアだけでなく、中国またアメリカの振る舞いも世界は注視しています。

世界の尊敬が集まるような振る舞いをしているのか、絶えず問われています。

国連が正常に機能するように責任と義務を果たしているのか、大国はもう一度考えて欲しいものです。

 

有無相生

 

 

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