老子小話 VOL 1119 (2022.04.23配信)

其身正、不令而行、其身不正、雖令不従。

(論語、子路第十三)

 

其の身正しければ、令せざれども行なわる。

其の身正しからざれば、令すと雖も従わず。

 

今回の言葉は、論語からお届けします。

権力をもった人が心がけるべき教えです。

ある集団を率いる権力者は、その集団の利益のために権力を用いて集団を動かします。

そのとき、ああ動けこう動けと命令を出します。

「命令を発するその身が正しければ、命令しなくても行なわれる。

一方その身が正しくなければ、命令したところで従わない。」

と孔子は言う。

その身が正しいとはどういうことをいうのでしょうか?

ここでは、権力者を一国の大統領とします。

権力者の言うことがその国の未来のためになっていることがまず必要です。

単に目先の損得に動かれていては失格です。

またその国が領土を広げ、隣国の脅威になる道を選んでも失格です。

共存共栄を図ってこそ、互いの国が利益を享受できるからです。

次に、権力者のする行為が、言っていることの実現にとってベストな方法になっていることが必要です。

自国の繁栄が他国の犠牲のもとに成り立つような方法では、正しいとはいえません。

互いの主権を尊重しながら、粘り強い交渉をして合意にたどり着き、しかも合意を着実に実行することが必要です。

大統領の言行一致こそが、その身の正しさの証しです。

その姿を国民が見て、始めて大統領への信頼が生まれます。

その信頼があれば、わざわざ命令を発しなくても、物事は動いていきます。

いわばボトムアップで現場は動き、さらなる利益に向けて、いろいろな改善が提案されていく。

その反対に、国民を欺いて侵略の道を歩み、他国民の犠牲のもとに自国の繁栄を目指していては、国民の信頼は遠のきます。

自国民を強権のもと洗脳できるかもしれませんが、いずれそのほころびはでてきて、命令を誰も聞かなくなる。

孔子が生きた、2500年前の春秋時代は、いつ隣国が攻めて来るかわからない時代だったので、権力者は国民の信頼を得ないと自国を守れなかったわけです。

権力者は命令を発するだけで、実際に戦うのは国民だからです。

孔子の言葉が今もなお生きつづけているのは、人間の悲しい習性なのでしょうか。

通信技術が発達した分、フェイクニュースが飛び交いますが、確かなことは、権力者は何をやってきたのか?という行為の検証はできます。

目的は言いつくろうことができても、侵略と無差別殺戮という行為は終世消すことはできません。

 

有無相生

 

 

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