老子小話 VOL 1117 (2022.04.09配信)

合抱之木、生於毫末、

九層之台、起於累土、

千里之行、始於足下。

(老子、第六十四章)

 

合抱の木も毫末より生じ、

九層の台も累土より起こり、

千里の行も足下より始まる。

 

今回の言葉は、老子です。

大事件はささいなことから生じるという。

小さなうちに対処すれば大事にならずに済むのに、放っておいて手が付けられなくなる。

その例を老子は挙げます。

「ひとかかえもある大木も毛先ほどの芽より生じる。

九層の高台も盛り土の積み上げから起こる。

千里の旅も一歩から始まる。」

リスク管理の言葉で言えば、ヒヤリハットのうちに対処することを言います。

ヒヤリハットは、大事件を生む芽(原因)であり、かつ幸い大事件に至らなかったものです。

ヒヤリハットのうちに対策していれば、事件は小さくて済む。

それを見過ごしていると、大事になり対処に多大のコストがかかるようになる。

誰しも人生のうちで、そんな経験を何度か繰り返しているのではないでしょうか。

個人の経験のみならず、社会という組織の歴史、そして人類という種の歴史においても、永遠に繰り返しているように見えます。

核戦争にまでいたってしまうと、もう種の絶滅をはらむ危機に陥ります。

人間には知があるので、誰かがヒヤリハットに気づくことがありますが、組織がそれを放置すれば、結果としてヒヤリハットを見過ごすのと同じです。

今回のウクライナ危機に関しても、チェチェン紛争、クリミア紛争と10年にわたってロシアの横暴に専門家は赤信号を出していましたが、国際社会が放置してきたことが原因と言われています。

その危機にウクライナ自身が準備してきたので、ロシアの侵攻にある程度対抗できているとのことです。

国連安保理事会は、常任理事国のロシアが侵攻の主体のため、無力となりました。

侵攻の主体になっても常任理事国は拒否権を持つことを主張したのは、ソ連の独裁者スターリンだったようです。

何の因果かわかりませんが、同じロシアのプーチンがスターリンの恩恵にあずかることになりました。

すでに起きてしまった大事件に世界がどう対処すればよいのでしょうか。

ウクライナへのできる限りの支援とロシアへのできる限りの制裁と調停の努力を続けるしかありません。

制裁は、ロシアに侵攻の代償を認識させ、これ以上の侵攻を続けても意味がないとわかってもらうこと。

調停は、武力ではなく話し合いで互いの主張の調和を図り解決すること。

弱肉強食の論理が通ってしまうと戦国時代に逆戻りです。

 

有無相生

 

 

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