老子小話 VOL 1114 (2022.03.19配信)

The greater the state, the more wrong and cruel its patriotism,

and the greater is the sum of suffering upon which its power is founded.

(Leo Tolstoy)

 

国家が大きくなればなるほど、その愛国心はより間違って残酷になり、

その権力の基礎になる苦しみの合計はより大きくなる。

 

ロシアの大文豪トルストイの言葉をお届けします。

「戦争と平和」に込めた自国の文豪の思いをプーチンに味わっていただこうと思います。

ロシアを世界の大国にさせるというプーチンの野望は過剰な愛国心のあらわれと見てよいでしょう。

ソビエトが崩壊して多少は小さくなりましたが、ヨーロッパから東の樺太、北方諸島まで広大な領土を保有しています。

北方4島の一つ歯舞群島から根室の納沙布まで、わずか3.7キロしか離れていません。

このように国土が大きくなると、国土を守ろうとする愛国心はねじれて、より邪悪になり残酷になるとトルストイは心配する。

さらにこの愛国心は、軍事力強化を導き、核兵器の保有数も世界一にまでする。

おまけに、隣国の領土も自国防衛のために自分のものにする野心を生む。

そのための権力の行使は、隣国ウクライナへの侵略戦争だけでなく、軍事援助国や経済制裁国への核兵器による威嚇、さらに自国民への思想統制弾圧まで及んでいます。その権力がもたらす苦しみは全世界に及んでいるといってよいでしょう。

今朝Youtubeを聞いていて、ホロドモールというジェノサイド(大量虐殺)のことを知りました。

これは1930年代にロシアがウクライナに大量の穀物輸出の義務を課したため、ウクライナ国民の生存のための収穫量まで奪い、300万の餓死者を出しました。これを主導したのが、プーチンが尊敬するスターリンだったわけです。

ロシアの強権がもたらしたこの悲劇を繰り返さないために、ウクライナが身体を張って自国を守る姿勢はうなづけます。

この悲劇は、「赤い闇」という題で、2020年に映画化されています。

大国の脅威は、ロシアよりも中国のほうが大きいのは間違い有りません。

中国が、国民の愛国心をあおって巨大な軍事力を用いて台湾や南西諸島に侵攻する可能性は無視できません。

ウクライナの戦いは、明日のわが身に起こる試練と考えてよいでしょう

日本がやらければいけないのは、核兵器を民間人に使用された国の悲劇を訴え、核廃絶のリーダーシップを発揮することだと思います。

悲しいかな、ロシアでも中国でも、先人たちの優れた教訓を血肉にしていない指導者がいないのが残念です。

 

有無相生

 

 

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