老子小話 VOL 1113 (2022.03.12配信)

足不辱、知止不殆。

可以長久。

(老子、第四十四章)

 

足るを知れば辱(はずか)しめられず、

止まるを知れば殆(あや)うからず。

以って長久なるべし。

 

危急存亡のときに老子の言葉ほど生きてくるものはありません。

中国の春秋戦国という戦乱の世に生きた思想家の思いが込められているからでしょう。

「ほんとうの満足を知る者は、屈辱を受けて恥をさらすことはない。

また、適切な所でとどまることを知る者は、わが身を危険にさらすことはない。

こうしていつまでも安全に長らえることができる。」

国盗りの主人公ロシアが、クリミアを併合し、ドネツク・ルガンスク地方を侵略し、更にウクライナ首都キエフを包囲しようとしています。

侵攻の理由をドネツク・ルガンスク地方の独立と当初言っていましたが、ウクライナを属国にしようという欲望をむき出しにしています。

足るを知らないにもはなはだしい。

冷戦が終わって、さあ互いの国の主権を尊重し協調の時代だといっていた世界が、力がものいう世界に逆戻りした感じです。

その力も民間人を対象に非人道的な武器で痛めつけるという邪悪さが加わっている。

力で勝利をおさめても、プーチンは終生歴史に恥をさらすことになる。

ドネツク・ルガンスク地方にいる親ロシア派の自立を支援し、そこへの外交的努力をしていれば、戦争は起こらなかった。

それが、「止まるを知る」ということです。

この侵略戦争が残すものは、ウクライナの不信と怨念、そしてプーチンの汚名とロシアの衰退でしょう。

ソビエトはなぜ崩壊したのか?、プーチンにその理由をもう一度考え直してほしいと思います。

自由主義陣営の外圧で崩壊したのではありません。

内部から崩壊していった。

非効率な経済と、内部に存在していた民族の独立の気運が国家としての吸引力を弱めていった結果です。

かつての属州がロシアを見直す日は、軍事力ではなく国際協調によって周辺国に恩恵を及ぼす日です。

昨日は、3.11大震災から11年目の日でした。

コロナ禍で復興も思うように進まないかもしれませんが、ウクライナ危機による原油高や物価上昇の重荷がさらに加わっています。

しかしこれも平和への前進のための試練だと思っています。

給与が上がらず物価が上がるなら、消費を抑え支出を減らすしかありません。

足るを知り、止まるを知ることこそ、今心に響きます。

 

有無相生

 

 

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