老子小話 VOL 1111 (2022.02.26配信)

治大國、若烹小鮮。

(老子、第六十章)

 

大国を治むるは、小鮮を烹(に)るが若し。

 

ロシアがウクライナ侵攻を始めました。

かつては同胞であった国ウクライナが自由主義陣営に取りこまれ、ロシアの防衛に脅威があるというのが侵攻の理由です。

始めはウクライナにいる親ロシア派の要請に応じたと言っていましたが、結局首都キエフまで侵攻し現政権を打倒し親ロシア政権を作る魂胆が見えてきました。そのやり方は、軍事力にまかせて力づくで思いを遂げようとする、人類が太古から続け未だにやっている愚かなやり方です。

この事態をながめ、プーチン大統領は大国を治める資格なしと自ら示しているように思え、老子のこの言葉を思い浮かべました。

小鮮とは小魚のことです。

「小魚を煮るときは、かきまわしたりつついたりしては魚の形がくずれてしまうので、形をくずさないように静かに煮なければならない。

大国を治めるには、これと同じように無用な手出しはしないほうがよい。」

大国はとかく武力で隣国を攻め、力づくで要求に従わせようとする。

このやり方は、小魚を無理やりすりつぶしすり身にして、大国の体制に組み込むようなもの。

これでは、小魚のよさを生かした政治を行なうことはできない。

老子は、万物は生まれながらのよさを持っているので、それを外部の力で殺さぬようにし、互いに生かしあうように調和を保つのが政治の基本という。

それを小魚を煮るというたとえで示しました。

ウクライナは9世紀にキエフ大公国としてスタートしており、ウクライナの自治を目指して、しばしばロシアと戦ってきました。ロシア革命後に独立宣言をしましたがロシア赤軍に敗れソ連(旧ロシア)に併合され、1991年ソ連崩壊で独立国として再スタートを切った経緯があります。

ウクライナにはウクライナ独自のルーツがあり、それが魚の形として根っこにあると思います。

ウクライナの歴史は、同化策を取りルーツを潰そうとするロシアへの抵抗の歴史のようです。

中国におけるウイグル問題も、同化策をとり自治を許さないやり方が生む悲劇です。

民族の多様性を認め、民族のルーツを尊重しながら、和を保つ政治手法は人類の流れのように見えますが、軍事力に頼る旧人類にはどのように対処すればよいのでしょうか。少なくとも言えるのは、抵抗の意思を示すことは確かでしょう。

 

有無相生

 

 

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