老子小話 VOL 1102 (2021.12.25配信)

All that glisters is not gold.

(Shakespeare, “Merchant of Venice”)

 

いよいよ今年最後の言葉となりました。

今年の漢字は「金」になったので、金に関係する名言を探しました。

シェイクスピアの「ベニスの商人」からの言葉です。

glistersは原文で使われていますが、glittersのほうが有名になっています。

意味はどちらも「輝く」で同じです。

訳すまでのありませんが、「光輝くものは必ずしも金ならず。」

この言葉のあとで、Gilded tombs do worms enfold.という文が出てきます。

新潮文庫の福田恒存訳では、「金に塗られし墓の下は蛆の巣」とあります。

地上のお墓はぴかぴかだが、地下の遺体はうじだらけ。

見た目と中身は別物なので、外見にだまされないようにという意味が込められています。

自然界を見ると、目立つ色で虫を誘い、葉で虫を捕らえる食虫植物があります。

虫は本能でどうしても食虫植物に近づいてしまう習性がある。

一方人間社会に目を転じれば、all that glittersはおいしい話とも解される。

人間も金欲という悲しい性があるため、老いも若きもおいしい話に誘われる。

銀行預金の年利が低迷する現在、儲かる金融商品の投資話は光輝くものに見えてしまうのは致し方ない。

そんな時思い出してほしいのが、今回の言葉です。

冷静に考えれば、価値あるものは埋もれているはず。

砂金は泥に埋もれ、金鉱石は金山に埋もれています。

輝くものが皆金なら、探すのに誰も苦労はしない。

将来輝く人材もまた社内に埋もれている。

人事がそれを見出さないうちに、輝く人材は組織を去る。

今回の言葉は、日本のあちらこちらで輝く言葉として意味を放っています。

 

有無相生

 

 

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