老子小話 VOL 1100 (2021.12.11配信)

何謂貴大患若身。

吾所以有大患者、爲吾有身。

及吾無身、吾有何患。

(老子、第十三章)

 

何をか大患を貴ぶこと身の若しと謂う。

われに大患有る所以の者は、われに身有るが為なり。

われに身無きに及びては、われに何の患い有らん。

 

老子小話が本メルマガの主題なので、年のしめは老子となります。

わが身を大切にする人に政治を任せるのがよいと語る章です。

その理由は、国をわが身のようにいたわるからだそうです。

つい先日雇用調整助成金受給で内閣官房参与を辞任された政治家がいましたが、国民そっちのけでわが身しか考えない方もいるようです。

政治家でありながら事業主でもある立場を利用して二重に報酬を得ているように見えてしまいます。

今回の言葉はその導入となる言葉です。

「(名誉とか財産とか)大きな心配事を大切にしてわが身と同じように考えるのはなぜだろうか。

われわれが大きな心配事を持つことになるのは、われわれに身体があってのことだ。

身体がなければ、なんの心配ごとが起ころうか。」

すべての基本は身体ということになる。一言でいえば、命あっての物種。

確かに死んでしまえば心配事は消える。

一方、生きている限りは身体を背負うことになる。

つまりは身体を保ちながら、心配事と付き合わねばならないことになる。

身体は自分のなかの自然であり、それを保つには、自然の原理を理解して自らを養うことが必要になる。

栄養と運動を与えて身体を鍛え、十分な睡眠で疲れを癒し身体を養う。

心配事との向き合い方は、できる限りのことをやったあとは深追いしないことです。

孔子は「五十にして天命を知る」といいましたが、何歳になっても天命を知るのは難しい。

政治家や経営者を見ても、自分を見ても明らかのようです。

ただし天命を待つことならできそうです。

寿命はまさに天命ですから、生き続けることが天命を待つということになる。

わが身を大切にする人に政治を任せるのがよいといった老子の真意は、天命を待てるまで国民の身体のため人事を尽くせるかが政治の本質だといっているようです。

 

有無相生

 

 

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