老子小話 VOL 1098 (2021.11.27配信)

外物不可必。(中略)

人主莫不欲其臣之忠。

而忠未必信。(中略)

人親莫不欲其子之孝。

而孝未必愛。

(荘子、外物偏第二十六)

 

外物は必すべからず。(中略)

人主、その臣の忠なるを欲せざるは莫(な)し。

しかれども忠いまだ必ずしも信ぜられす。(中略)

人親、その子の孝なるを欲せざるは莫し。

しかれども孝いまだ必ずしも愛せられず。

 

11月最後の言葉となりました。

今回は荘子外物篇の言葉をお届けします。

少し長いですがご勘弁ください。

「すべて自己の外にあるものは、思うようにならないものである。(中略)

世の君主たるもの、臣下の忠誠を望まないものはいない。

しかし、臣下が忠誠を尽くしても必ずしも君主に信任されるとは限らない。(中略)

世の親たるもの、わが子の親孝行を望まないものはいない。

しかし、子供が親孝行を尽くしても必ずしも親に愛されるとは限らない。」

君子は上司に、臣下は部下に置き換えるとなるほどとうなずかれる人も多いと思います。

上司に忠誠を尽くして誤りを正す意見を言ったところ、反対に逆恨みされることがある。

親子関係でも、親のためを思い孝行しても、下心ありと思われひどい仕打ちを受けることがある。

荘子の書かれた2000年を超える昔から今に至るまで、何度も同じ事が繰り返される。

その理由は、外物篇冒頭の「外物不可必」です。

自分以外のことは思うようにならない。

この真理は、子供のうちに納得する必要があると思われます。

どうにもならないことにどう対処するか、懸命に考えるくせをつけるということです。

今朝YouTubeで養老先生が言っていた、自分の体は自分のものか?という問いかけがこれに関係します。

先生曰く、自分の体は自分のものではない。

自分の生まれたのは自分の意志ではない。

自分の胃も腸も自然に育ったもので、自分が育てたものではない。

つまり、自分の体は外物になり、思うようにならないもの。

歳をとれば老化し、いずれ死ぬ。

生きることは、思うようにならないものとどう向き合うのかということなる。

数日前に起きた愛知県の中学生刺殺事件の当事者はいじめの加害者と被害者だった。

いじめで命を落とす子供、いじめで命を奪う子供。

自殺も他殺も紙一重です。

いじめもまた外物の一つで、子供の世界だけでなく大人の世界でも起こりえる。

思うようにならないことに向き合って、一人で悩まずに、自分でできることからまず始める。

あきらめずにできることを積み重ねることが道を拓くようです。

荘子の言葉は生きる知恵を与えてくれます。

 

有無相生

 

 

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