◆老子小話 VOL
1090 (2021.10.02配信)
God, grant me the
serenity to accept the things I cannot change,
courage to change the
things I can,
and wisdom to
know the difference.
(Reinhold Niebuhr)
今回の言葉は、ニーバーの祈りをお届けします。
この言葉は、ETV「こころの時代」で、高浜寛さんの話の中で知りました。
彼女がアルコール依存症に苦しんでいたときに出会った言葉だそうです。
もともとはアメリカの神学者ニーバー氏の祈りをアルコール依存症や薬物依存症を克服するための組織が採用したことから広く知られるようになったそうです。
Serenityというのは静けさのことで、平静とか心の落ち着きということもできます。
訳すと、「神よ、変えられないものを受け入れる冷静さを私に与えたまえ。変えられるものを変える勇気を与えたまえ、そして変えられるものと変えられないものを見分ける智慧を与えたまえ」となります。
アルコール依存症になりかけの自分としては、アルコールに頼る自分を変えたい気持ちはあります。
アルコールは悩みから一時解放する薬にはなりますが、悩みを消してはくれません。
依存症克服には自分を変えようとする意志と勇気が必要になる。
それを授かるように祈るのは誰もが経験することではないでしょうか。
もう一つ大事なのは、変える事ができない運命です。
それはどうあがいたって逃れることはできません。
不治の病にかかってしまったら、それを受け入れる平静さがまず必要になる。
冷静になれば、残された時間でどう生きるかを考えるゆとりが得られます。
変えられないものを変えようとするほど苦しいことはありません。
従って、それらのものを見分ける力こそが、生きる力を与えてくれます。
仏教的にいうと、諸行無常というあらゆるものは変化するという定理がある。
変らないものは何処にもないように思える。
しかしその変化は、あらゆるものはお互いに関係しあっているという定理とともに存在する。
その関係性(縁起)に支えられていることは決して変える事ができない。
勇気も冷静さも、この見分ける力(智慧)によって自ずと湧いてくる。
ニーバーの祈りは、自己を諸行無常と縁起によって支えられる存在だと教えてくれる言葉のように思えます。
有無相生