老子小話 VOL 1082 (2021.08.07配信)

やがて死ぬけしきは見えず蝉の声

 (芭蕉)

 

昨日は広島原爆投下の日でした。

コロナ禍でしかも五輪開催の中での平和祈念式でした。

菅首相が原稿飛ばし読みで、『核兵器のない世界』の実現を言いそびれました。

その原因が原稿の糊付けということでしたが、なんとも緊張感のない一面を露呈しました。

これも因果のなす技で笑うに笑えません。

平和祈念式といえば、蝉時雨の中で聞く平和宣言です。

今回は、緊張感をもって生きているセミを詠った句です。

セミの一生は、3、4年を地中で暮らし、残りの2週間を地上で過ごし死んでいきます。

地上の2週間は、交尾して次の世代を残す準備です。

大きな声で鳴くのはオスで、生きるエネルギーをすべて次世代のために使います。

まさに緊張感ある一生を送ります。

芭蕉もセミの声を聞いて、あと2週間の命だけど頑張っているなと思ったことでしょう。

応援の気持ちと共に、セミの生きる姿を見て自分を振り返ります。

自分も余生いくばくもないが、残る力を振り絞って思い切り人生を楽しもうと。

セミの声から逆に生きるエネルギーをもらっています。

人間も歳を重ねてくると、人生のお手本となる生き物が身の回りにあふれていることに気づかされます。

芭蕉の句も、上から目線ではなく、自分もセミになった境地にいます。

荘子の「胡蝶の夢」のように、万物斉同の境地です。

 

有無相生

 

 

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