◆老子小話 VOL
1074 (2021.06.12配信)
Having nothing,
nothing can he lose.
(Shakespeare, Henry VI)
今回はシェイクスピアの言葉をお届けします。
訳すまでもありませんが、「持っていないものは失いようもない」。
高望みしていろんなものが欲しくなるのが現代の消費社会。
持てば持ったで、失くすことが心配になる。
例えて言うなら自家用車。
買い物に行ったり、旅行に出かけるのに便利だと買う。
買った後で、保険や車検や駐車代と意外に維持費がかかる。
必要なときに車を借りれば済む話。
最近の若い人は、断捨離で持ち物を増やさない傾向があるという。
そのほうが身軽で部屋も広く使える。
まさにシェイクスピアの言葉を実践されている。
老荘的に言っても、Nothing is best.でしょうか。
第33章でも足るを知ることを勧めます。
物理的にも心理的にも空きの空間を作ることで、心の余裕を生み出そうとする。
話を拡げると、確かに命も当てはまります。
最初から生まれて来なければ、死ななくて済む。
人生の悩みからも解放される。
しかし命ばかりは、芥川の河童のように選択の自由は与えられない。
ある日突然人間世界に放り出される。
命さえあれば、他になにもなくても、心がけ次第で日々を豊かにできる。
シェイクスピアの言葉をポジティブに解釈するのが現代流生き方のようです。
有無相生