老子小話 VOL 1070 (2021.05.15配信)

自分の一生の終わりを

初めと結びつけることのできる人は

最も幸福である。

 (ゲーテ)

 

今回はゲーテの言葉をお届けします。

ゲーテは、「ファウスト」を書いたドイツの

文豪ですが、名言も多く残しています。

今回の言葉も味わい深い言葉です。

この世に生まれてきたから終わりがある。

生まれてから親や社会に養われて成長し、

大人になってから社会のために仕事をし、

老いて、育てた人に見送られて終わる。

「初めと結びつける」というのは、人生を終える

ことができたのはこの世に生を受けた幸せが

あったからと考えることです。

人生は苦の連続だと教える仏教でも、今現在

生きている事が、一瞬の死と生の連続と考えて

悟りの境地に至ります。

これも言ってみれば、今の一瞬一瞬において、

死と生を絶えず結びつけて考えているわけで、

ゲーテの言葉の意図から外れるものではありません。

「荘子」にも、人間の死生はあたかも昼夜のごとき

もので格別の区別はないと書かれている

「得る者は時なり。失う者は順なり。」

生まれてきたのは運よくタイミングがよかった

までのこと。去っていくのは去るべき順番が

回ってきただけのこと。

「荘子」の場合の「結びつける」は、生=死という

ことになります。

この考えがなぜ最も幸福かというと、人生の

苦しみに出会ったとき、この原点の考えに立てば、

何とか乗り越えることができるからだと思います。

自分の退場(終わり)は誰かの登場(初め)を後押しする。

これも政治家や社長に心すべきことでしょう。

こう考えることが出来る人は仕事をやりつくした人

なので最も幸福かもしれません。

 

有無相生

 

 

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