老子小話 VOL 1069 (2021.05.08配信)

雷の 図にのりすぎて 落にけり

 (夏目漱石)

 

今回は夏目漱石の俳句をお届けします。

思わず苦笑する内容です。

夏目漱石は、正岡子規に俳句を学んだのは

有名な話です。

出世作の「我輩は猫である」も、俳句仲間の

高浜虚子に薦められ同人誌「ホトトギス」に

連載され、好評となり出版されました。

従って、漱石と俳句は切っても切り離せない

関係があります。

この句を読んで思い浮かべたのは、俵屋宗達の

風神雷神図です。

あの太鼓を背負って天空に舞う雷神。

雷は、雷神が起こす稲妻。

雷鳴をとどろかせて空で光っている分には、

ああ雷だなあと見過ごせる。

しかし止まずにますます勢いづくと、いい加減

にしてくれと思うようになる。

最後に雷が落ちると、図に乗りすぎたねと思う。

まるで、雷神が地に落ちたような気になる。

漱石の句には、落雷までのドラマが描かれる。

「図にのりすぎて」に、時間の経過が圧縮される。

自然現象を擬人化し、落語の落ちのように落着させる。

今回のコロナと五輪の行方は、どういう所に落着

するのでしょうか。

漱石の句に、図に乗りすぎる人間へのユーモアある

警告を読み取るのは考えすぎでしょうか。

 

有無相生

 

 

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