老子小話 VOL 1066 (2021.04.17配信)

足らざるに足るを見る。        

 (鷲田清一、「大事なものは見えにくい」)

 

今回も、哲学者鷲田清一さんの言葉です。

この言葉は柳宗悦氏の「茶道論集」から引用

しているので、孫引きになります。

老子第33章に「知足者富」とあるように、

足るを知ることで本当の豊かさを得る。

知足は、欲のなすままに求めていては

限りがないことを教える。

おなか一杯食べると眠くなる。

ちょっと足らない位が頭はよく働く。

鷲田さんは、足らない部分を常に残して

無限なるものに自分を開くことが、持続可能

な発展に必要だと論じている。

そもそも老子の知足も、空きの空間を残して

偶然が導く無限の可能性に期待する意味がある。

無用の用と呼ぶのは、そんなあそびの空間です。

従って、「足らざるに足る」の方が老子の意図に

合っていると思われます。

今はやりのSDGsと老子がつながっていたことを

鷲田さんの言葉で気づきました。

SDGsは持続可能な発展目標ですが、それを支える

基本理念は「足らざるに足る」ですね。

無限なるものに自分を開くこと。

それだからこそ持続可能なのでしょう。

柳宗悦氏は、足らざる、欠如の空間を貧の心と

呼び、茶の本質と考えたそうです。

茶道だけでなく、世界が進むべき道の基本理念に

老子の教えが生きているのは嬉しい限りです。

 

有無相生

 

 

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