老子小話 VOL 1064 (2021.04.03配信)

暗きより暗き道にぞ入りぬべき

はるかに照らせ山の端の月           

 (和泉式部、「拾遺和歌集」)

 

春真っ盛りというのに、今回の言葉は

ちょっと暗いかもしれません。

和泉式部は恋多き女子として知られ、

不倫した相手にも死なれ、暗い道から

さらに暗い道に迷い込んだあげくに

詠んだ歌です。

煩悩にまみれた生き方を暗き道といい

そこからどうしても抜け出せない以上

救いを山の端に昇る月に求める。

月というのはわれわれを見守る存在。

仏の慈悲にすがるしかありません。

信仰心がなくても、月明かりは闇の道

を照らす貴重な明かりです。

都会にいると貴重さに気づきませんが、

大自然の中では便利な明かりです。

今を生きるわれわれも、煩悩多き人生を

歩んでいるので、この歌に親近感を持つ

のではないでしょうか。

そんな中、闇夜をに輝く月を眺めると、

何故かほっとする気持ちになる。

月は、遠くから暗く沈む心に一縷の光を

投げかけてくれる。

「はるかに照らせ」というのが又健気です。

多大な強烈な光など求めない。

僅かな光でいいから遠くから届けて欲しい。

阿弥陀様の光にすがるのは、和泉式部のみ

ならず、タオイストにとっても共感できます。

 

有無相生

 

 

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