老子小話 VOL 1063 (2021.03.27配信)

將欲弱之、必固強之。

將欲廢之、必固興之。

將欲奪之、必固與之。

 (老子、第三十六章)

 

将にこれを弱めんと欲すれば、

必ず固くこれを強くせよ。

将にこれを廃せんと欲すれば、

必ず固くこれを興せ。

将にこれを奪わんと欲すれば、

必ず固くこれに与えよ。

 

先週の荘子に続き今回は老子です。

荘から老へと言葉は続きます。

「弱めようとするならしばらくこれを強め、

衰退させようとするならしばらく繁栄させ、

奪おうとするならしばらく与えるとよい。」

柔弱なるものが剛強に勝つには、自分の力で

ぶちあたっても跳ね返されるばかり。

すべて反対のことをして対応すれば、自然と

相手は負けてくれる。

何か策士的でずるいようですが、これが自然の

法則に従順な生き方です。

強いものは今強くてもいつまでもその強さを

維持できない。

そのうちに自然と威力は弱まっていく。

人類の歴史を見ても、かつて世界を支配した

西欧の国々も今は普通の国に納まっている。

ギリシア・ローマしかり、スペインしかり、

大英帝国しかりである。

動物世界に目を向ければ、狩りの得意な

最速チーターでも走れるのは僅かな時間で、

その時間を乗り切れば追われた獲物は難を

逃れられる。

強いものにはその力を思う存分使わせて

消耗させるのがよい。

孫子の兵法には、敵の力を戦う前にいかに

消耗させるかが説かれています。

今の世界を見ていると、アメリカの勢力が

衰えて中国が覇権を握る時代が近づきつつ

ある様相を見せています。

特に海上覇権主義では目に余るものがある。

習近平さんの独裁政権のなせる技でしょうが、

それも当分続きそうです。

柔弱国日本としては力ではどうしようもないので、

正論を言いつつ、老子的な策士の立場を取らざる

を得ないのではと思ったりもします。

 

有無相生

 

 

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