老子小話 VOL 1059 (2021.02.27配信)

いかのぼりきのふの空の有り所

 (与謝蕪村)

 

今朝は風が強く吹いています。

風から連想するのは空高く舞う凧。

そこで今回は蕪村の句をお届けします。

「いかのぼり」は凧(たこ)のことで、

春風にのせて子供があげるので、今の

季節に合っています。

凧が昨日の空と同じ所にあがっている

様子を詠っています。

たこあげというのは、子供のときの思い出

に繋がります。

風を受けながら、空高くのぼり動かない。

風が時の流れとするなら、子供の頃の記憶は、

流れの中である一点に留まっている。

時の流れに流されるとは記憶が薄れ消えること。

「昨日の空の有りどころ」という表現によって、

父親の助けを借りながらたこあげをした思い出が

よみがえるさまが想像できます。

最近宮澤賢治の「風の又三郎」を読む機会があり、

風の音に関心を持つようになりました。

今日の風も「どっどど どどうど」と聞こえています。

蕪村の句には風の音は出てきませんが、たこが空の

一点の留まっているのは、風が空間を支えている

ことを暗に表現しています。

流れるものがあって始めて、留まるものが生まれる。

蕪村の句は、たこあげの映像から奥に潜む真理を

引き出してくれます。

 

有無相生

 

 

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