◆老子小話 VOL
1057 (2021.02.13配信)
片手を満たして、憩いを得るのは
両手を満たして、なお労苦するよりも良い。
それは風を追うようなことだ。
(旧約聖書、「コヘレトの言葉」第4章6節)
今回は旧約聖書からお届けします。
「コヘレトの言葉」は謎めいた言葉が多いので、
何を意味しているのか考える楽しみを与えて
くれます。
「風を追う」という表現が度々出てきます。
第1章で、風はただ巡りつつ吹き続けるという。
砂漠で聖書は生まれたので、流れるのは風です。
日本なら、「方丈記」に出てくる「ゆく河の流れ」で、
絶えず流れてもとの水をとどめない。
移り行くものを追い求めるので、空しいことを
意味します。
片手にある食料と水で、束の間の安らぎを得る。
生きるための労苦を癒やすのはそれで十分である。
それを欲張って両手に抱える量を得ようと労苦する
のは空しいことだと教える。
コロナが流行し始めた頃のマスク不足は、まさに
誰もが必要以上のマスクを買い求めようとしたために
おこった現象でした。
今ではマスクの供給過多になり、買いためた人が安売り
している有様です。
老子も第九章で、
「金玉堂に満つるはこれを能く守る莫し」
宝石を家中に一杯にしても、盗まれないように労苦する
原因が増すばかりという。
砂漠に生きることは、生きるに必要な分だけ食料と水を
備えるということで、余計なものを抱えると移動すら
ままならなくなる。
コロナが我々に教えてくれたことは、「コヘレトの言葉」に
書かれている教えとかぶるものが多いですね、
有無相生