老子小話 VOL 1056 (2021.02.06配信)

風定花猶落

鳥啼山更幽

観音妙智力

(良寛)

 

風定まるも花なお落ち 

鳥啼いて山さらに幽かなり

観音妙智力

 

今回も良寛さんの詩をお届けします。

この詩は、紀野一義著「仏教のキイ・ワード」

で知りました。

良寛さんは江戸後期の禅宗のお坊さんです。

「風はやんだのにまだ花は落ちる。

鳥が鳴いて山はさらに静かになる。

これを観音の妙智力という。

そんな馬鹿な!」

観音妙智力とは、この自然を動かす

眼に見えない不思議な力です。

紀野さんは、この詩の面白さは最後の

「咄」にあるといいます。

確かに咄には「何を馬鹿な!」と叱りつける

意味がある。

叱りつけるのは自分と考える。

わかったような気になる自分を戒める。

そんな簡単にわかった気になるな、と

戒めている。

自然の施す大慈悲は言葉に尽くせないもの。

風と花と我が一体になって感じるもの。

鳥と山と我が一体になって感じるもの。

そのような大慈悲を観音妙智力の一語では

言い尽くせない。

やはり同じ自然に身を置いて体感する以外に

ないようである。

「咄」の意味は大きい。

 

有無相生

 

 

戻る