老子小話 VOL 1053 (2021.01.16配信)

両掌相拍てば声あり、

隻手に何の音声かある。

(白隠禅師、公案)

 

今回は白隠禅師の公案をお届けします。

公案は禅僧が修行のために問われる問いです。

白隠禅師はこう問いました。

「両手を打てばパーンと音がする。

そのうち片手の音はどの部分か?」

これは「隻手の公案」とも呼ばれています。

右手と左手がぶつかって音を発するので、

片手の音に分解できるわけがありません。

片手の音を考えようとするところに無理

がある。

しかし日常私たちは片手の音を聞こうとする。

ある二人が協力して仕事を成し遂げたとき、

自分の貢献分をアピールしがちである。

貢献分で報酬を決めるからである。

二人の貢献が右手と左手で、仕事の成果が

それらがぶつかって生じた音とするなら

片手で音が生まれるはずはない。

手は原因で音は結果である。

結果に対し、原因の寄与を分割できない。

仕事が失敗して、非を互いになすりつける場合

は無理にそうしようとする。

人間が出会うことも、手をたたくことになる。

そこで生まれる縁はその後に様々な波動となって

未来の結果に繋がっていく。

そんなとき、縁の不可思議さ、縁の恩恵ということ

を考えさせる白隠さんの公案でした。

 

有無相生

 

 

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