老子小話 VOL 1052 (2021.01.09配信)

吾始乎故、長乎性、成乎命。

(荘子、達生篇第十九)

 

吾れ故に始まり、性に長じ、命に成る。

 

新年が明け早くも一週間が経ちました。

コロナ感染の勢いはとどまることを知らず、

二回目の緊急事態宣言が発令されました。

しかし海外からの渡航者を受け入れ、時短営業のみ

という甘い対策なので、感染拡大と医療崩壊の

抑止効果はあまり期待できないでしょう。

今回の言葉は荘子から選びました。

この言葉は説話に出てくる男の言葉です。

孔子は大きな滝に飛び込んだ男を見かけ、

てっきり自殺するものと思ったら、その男は

平然と浮かび上がり歌を歌って歩いていく。

孔子は滝に飛び込んでなぜ平気でいられるのか聞いた。

その男は、

「滝のかかっている故郷に生まれ、滝に親しんできた。

そういう永年の習慣を故という。その習慣のもとで、

水に慣れ泳ぎも上達しました。その性質を性という。

そして最後に意識せずに水の道に身をまかせるように

なりました。これを命という。」

と答えました。

激流を泳ぎきろうと意気込むのではなく、水の持つ

自然の性質を身に覚えこませ、それに身を任せれば、

万事は解決するという教えでした。

コロナ禍も世界を襲う激流です。

コロナ感染は飛まつによる感染であることも明らかに

なりました。

飛まつを浴びないようにマスクやフェースシールドの

防護具を装着し、浴びたら飛まつを消毒・洗浄する。

コロナは変異するのでワクチンを過信せず、危ない場所

に近づかないことに尽きます。

対策は何も特別なことはない。

感染の機会の余地を残すのが今回の緊急事態宣言なら、

その余地を消すのが、個人の努力といえるでしょう。

コロナ対策も、別に意識せずともごく自然に行なえれば、

命の域に達せられると思います。

 

有無相生

 

 

戻る