老子小話 VOL 1048 (2020.12.12配信)

小国寡民。(中略)

隣国相望、鶏犬之声相聞、

民至老死、不相往来。

(老子、第八十章)

 

小国寡民。(中略)

隣国相望み、鶏犬の声相聞こゆるも、

民老死に至るまで、相往来せざらん。

 

今回の言葉は老子から選びました。

民が平和に暮らせるのは小国寡民の状態に

置くことだと教えます。

小国は国土が小さく、寡民は人口が少ないこと。

日本の高齢化社会はまさにこの状態です。

隣国が向こうに見えていて、鶏や犬の声が

聞こえてくる状況になっても、国民は老いて

死ぬまで、お互いに往き来することはない。

高齢化社会を経済成長一本で乗り切れるかというと

そうでもない。

かつての日本を見ればわかるように、経済成長は

若いエネルギーが生産力を支えてきました。

しかし今の日本は、年金や医療で高齢者を支える

若者が疲弊しています。

今更ながら子育て支援策が採られ始めていますが、

最早子供より自分の世話で手一杯の感がある。

こうなると小国寡民状態で世の中がうまく回る

方策を考えなくてはならなくなる。

老子の策は、以下の通り。

「便利な物を使わずに人民が自分の命を大切にし、

遠方に移動させないようにする。そうすれば、

舟も車も乗るときがなくよろいや武器もあっても

見せびらかすことはなくなる。

人民は自足の生活になり、衣食住において知足を

知り、ふるさとを大切に思うようになる。」

これが平和ということになる。

GOTOキャンペーンを用いた人の移動による経済策も

大事だが、もっと身近な所に物質的豊かさを超えた

いろいろな良さがあり、それに気づかせてくれるのが、

小国寡民策です。

何でもかんでも都会に集中させ、都会の電気は地方

の原発にまかせる政策はもう古い。

自足できない社会は生きる上でもろさを抱えることを

今回のコロナ禍で学びました。

小国寡民は生きることを支える社会ではないでしょうか。

老いも若きもふるさとに留まり、ふるさとの良さを自分の

生の中で体験する社会です。

 

有無相生

 

 

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