老子小話 VOL 1047 (2020.12.05配信)

人生は一箱のマッチに似ている。

重大に扱うのは莫迦莫迦しい。

重大に扱わなければ危険である。

(芥川龍之介、「侏儒の言葉」)

 

とうとう師走に突入しました。

コロナ一色の一年でしたが、コロナに

学ぶところも多かったように感じます。

今回の言葉は、芥川氏の人生の言葉です。

「我々は母の胎内にいた時、人生を処する道

を学んだであろうか?」という問いに発し、

人生を狂人が主催するオリンピックに例える。

まるで泳ぎ方を学ばずにプールに飛び込むようなもの。

更に、人生をマッチに例える。

一本のマッチで灯る火は僅かであり風が吹けば消える。

そんな火を重大に扱うのは馬鹿馬鹿しい。

一本のマッチは一日の命である。

日々の命が継続して、人の一生が構成される。

つまり、マッチの火が灯り続けることが重大になる。

一度でも消えると命は繋がらない。

その意味で、重大に扱わないと危険になる。

芥川氏自身は人生との闘いに疲れて自死したが、

生きるということは闘いで傷を受けるのを覚悟する

ことだという。

そのとき争いを避ける事ができれば、ダメージは減る。

老荘の道は、不争の方法を自然に学ぶ。

芥川氏の人生マッチ論に老荘思想が加わると、人生は

闘いではなく、自然における気の変化に変わってくる。

 

有無相生

 

 

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