老子小話 VOL 1038 (2020.10.03配信)

人は天地の霊なり。天地は限る所なし。

人の性、何ぞ異ならん。

寛大にして極まらざる時は、

喜怒これに障らずして、物のために煩はず。

(吉田兼好、「徒然草」第二百十一段)

 

人間は天地間のすぐれた霊妙なものである。

天地は無限である。

人間の心も無限の天地そのものである。

寛大にして何物にもとらわれない時、

喜怒に邪魔されず、物に心を悩ますことはない。

 

今回はつれづれ草の言葉を選びました。

味わい深い言葉です。

この段の始めは、「万の事は頼むべからず。」で始まり、

そして、

「勢ひありとて、頼むべからず。こはき者先づ滅ぶ。」

が続きます。

権力があるからといってそれを頼りにしてはいけない。

力を当てにしていた者は力が失せれば先に滅ぶ。

何か最近の菅内閣の振る舞いを諫めるような言葉です。

しかし、ここで紹介したいのは後段です。

他者と衝突を起こすのは、心が狭くなった時という。

一言で言えば、狭量になった時。

そもそも人間に与えられた空間は天地の無限です。

無限の天地において、何故心を狭い空間に閉じ込めて

置かねばならないのでしょうか。

いろいろな可能性を考えて寛大な心で物事を見れば、

無用な衝突は減るはずです。

気に食わないからといって自分に異を唱える人間を

排除し、お友達だけと付き合うのでは、心はますます

狭くなる。

そこには様々な意見を聞き、日本の道を探ろうとする

政治家としての誠実さが抜けている。

こんなことを700年以上前の兼好法師が暗に警告する。

安倍政権以上に権力に頼る機会が増えている。

人徳がないが故の結果なのかはわかりませんが、

来年の選挙のためなのか、何か結果を早く出そう

という焦りが見え始めている日本の政治です。

 

有無相生

 

 

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