老子小話 VOL 1035 (2020.09.12配信)

且夫得者時也。失者順也。

安時而處順、哀楽不能入也。

(荘子、大宗師篇)

 

かつそれ得る者は時なり。失う者は順なり。

時に安んじて順におれば、哀楽も入る能わず。

 

今回は「荘子」から選びました。

「生命を賜ってこの世に生まれたのは時を得たまでのこと。

生命を失う者は去るべき順番が回ってきたまでのこと。

生を得た機会に満足し順番に逆らわずにいれば、

哀しみも楽しみもあろうはずもない。」

生と死に向き合って、喜んだり悲しんだりする。

荘子にとって生命は時の運だといいます。

偶然が重なって命が誕生し、偶然が重なり命を失います。

そんな偶然に一喜一憂していては、心身が持ちません。

人間の体はうまく出来ていて、高齢になるほど体の機能

が低下するメカニズムがあり、病気にかからなくても

必然的に死を迎えます。

この年齢が120歳くらいだと言われています。

従って、荘子は死を決めるのは順番だといいます。

生きるのが苦しいからといって、順番を飛ばして自死する

のは道に背くと考えます。

順番が来れば、死は向こうからやってくる。

喜怒哀楽の感情は、自分を中心に生まれる。

偶然生まれてきて順番に従って死んでいく他者と考えれば、

道のはたらきの厳かさにただただ感動するのみです。

その人が生きている間に、生の感動をどれくらい共有できた

かが生きる意味のように思います。

養生主篇では、「帝の県解」と呼ばれた教えです。

帝とは天帝、県とは束縛のこと。

生死という束縛から解かれて、喜怒哀楽から自由な境地に立つ。

時の運と生物の仕組みに従って、生の尽きるまで生を楽しむ。

なんとポジティブな思想でしょう。

 

有無相生

 

 

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