老子小話 VOL 1033 (2020.08.29配信)

生之畜之、生而不有、

爲而不恃、長而不宰。

是謂玄徳。

(老子、第十章)

 

これを生じこれを畜(やしな)い、

生ずるも而も有とせず、為して而も恃まず、

長たるも而も宰せず。

これを玄徳と謂う。

 

安倍首相が持病悪化により急遽辞任されました。

病を抱えながらこの難局を乗り切るため、

全身全霊を傾けて奮闘された姿は国民の記憶に

残ることでしょう。

今回もまた、老子の言葉を首相に贈りたいと

思います。

「聖人は万物を生み出し、万物を養う。

しかし生み出したからといってそれを私有せず、

自慢もしない。

長となっても居坐ってとり仕切ったりはしない。

これを奥深い聖人の徳と呼ぶ。」

自画自賛するトランプ大統領と真逆の徳です。

政治家の功績などというものは、歴史が証明する

もので今評価できる人はどこにもいません。

それを自分で評価するほど、愚かなことはない。

どんな政策も光と影があるもので、アベノミクス

は異次元の金融緩和で円安にし株価を上げた反面、

国の成長に必要なデジタル化の遅れが目立った。

コロナ対応では、デジタルインフラの遅れのみならず、

国民の命を守る体制の脆弱さが目立ちました。

いまだにオリンピック開催に執着し、経済一辺倒の政策

から脱却できていません。

歴史は光と影を後付けで評価し、影があるものの光の面

が際立ったとかいってくれるのでそれを待てばよい話です。

安倍首相に聖人を期待するものではありませんが、自分の

仕事の評価に言及しないという玄徳は持って欲しいと思います。

生産性の低い日本の政治を長年にわたりリードしてきただけでも

胸を張ってよいのではないでしょうか。

惜しむらくは後継者を育てなかったことかも知れません。

次の首相が背負う課題は多くまた重い。

老子が次期首相に望む資質は、無名の樸でしょうか。

樸はあらきであり、どんな姿にも変身できる素材(人材)。

従って、まだ名前はついておらず、名前を付けようもない素材。

そんな人材が与党にいるかは別にして。

 

有無相生

 

 

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