老子小話 VOL 1032 (2020.08.22配信)

聖人常無心、以百姓心爲心。

善者吾善之、不善者吾亦善之、徳善。

信者吾信之、不信者吾亦信之、徳信。

(老子、第四十九章)

 

聖人は常に心無く、百姓の心を以って心と為す。

善なる者は吾れこれを善しとし、

不善なる者も吾れまたこれを善しとして、

善を徳(得)るなり。

信なる者は吾れこれを信じ、

不信なる者も吾れまたこれを信じて、

信を徳(得)るなり。

 

今回は老子の言葉をお届けします。

国を治める方には心して欲しい言葉です。

「聖人は自分の心を持たず、人民の心を自分の心

としている。

善い者は善いとして処遇し、善くない者も善い

として処遇するから、善い統治者として認められる。

誠実な者を誠実だと信じ、不誠実な者も誠実だと

信じるので、誠実な統治者として認められる。」

政治家の資質を2000年以上前に述べています。

国民の心に寄り添い、国民が何を考えているか

自分の目と耳で確かめるのが第一歩だといいます。

世の中には、善とか誠実とか相対的な尺度で人を

評価する傾向がありますが、その尺度はひとにより

異なります。

聖人は、世間で悪い評価を受けている人に対しても、

そのまま誠実に受け入れて役割を果たせるようにする。

例えていうなら、ハッカーは他人のコンピュータに

忍び込んで悪さをする不善の者と考えられていますが、

聖人は彼らの技術を善と考え、テロリストの情報傍受に

役立てます。

この世には表と裏の世界があり、その両者をバランスよく

保っていくことが政治家には求められます。

老子流に言えば、表の無用は裏の用、裏の用は表の無用

となり、役に立つか否か、それを扱う人次第です。

善とか誠実とか、変な先入観で評価するのを止めて、人の

ありのままを見ることから全てが始まる。

今は少子高齢化社会で、高齢者の年金と医療介護で財政負担

が増えていく。それを補うため赤字国債を乱発し、ますます

赤字が膨らむ。

政治家は年金カットや自己負担率を増そうとするが、あからさま

にやると選挙で高齢者票を失うのでそれもできない。

若い移民を増やして働き手を確保すれば税収も増し、消費経済も

活性化し、さらに税収が増すように思われる。

しかし日本は鎖国の歴史が尾を引いているのか、移民に対する

壁が高い。

今の政治は現状維持に手一杯で、未来への展望がない。

人民の心が現状でアップアップしていて、その心につられて

政治もアップアップしているのか?

いやそれは違うと思う。

働きたい高齢者の心を捉えていないところに問題がある。

働きたい高齢者に就職の機会を与えていないことが、年金問題

と税収減を招いていると思う。

無用と思われている高齢者の用は必ず存在する。

逆に用と思われている現役世代の無用も存在する。

 

有無相生

 

 

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