老子小話 VOL 1031 (2020.08.15配信)

人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。

そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。

堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、

救わなければならない。

(坂口安吾、「堕落論」)

 

今日は終戦記念日です。

といっても、終戦を知る人の方が圧倒的少数に

なってしまいましたが。

終戦を期に、日本では価値観が180度変りました。

戦前は万世一系とする天皇による国家統治を掲げる

軍国主義が横行し、戦後は天皇が神から象徴に堕ち、

国民主権の民主主義が戦勝国により導入されました。

安吾さんはこの経験を踏まえ、堕落は人間の本質で

生きていることが堕落と考えた。

正しく堕ちるとは、他者に誘導されて堕ちるのでは

なく、自分自身を発見して堕ちきることだという。

確かに、人間は安易な方向に流れる。

楽して生きようとする。

社会主義が理想と考え、競争社会をやめ計画経済を

始めたソ連では、競争しなくても給料があるので、

真面目に働くことがばかばかしくなる。

なまける労働者が増えて経済が停滞し、社会主義は

破綻した。

国も堕ちきって始めて、生きる道を模索する。

現在の日本を見ても、少子高齢化に向け堕ちている

途中で、まだ堕ちきっていない。

安吾さんは、国も再生のために堕ちきることが必要

という。

いいかげんに堕ちると、問題の解決は先送りになる。

財政赤字の健全化はその一つの例。

いずれインフレにして財政赤字をチャラにしようと

まだたかをくくっている。

とことん堕ちて、にっちもさっちも行かなくなった時、

重い腰を上げる気になる。

堕ちる先に死が待ち構える。

死とはこれ以上堕ちることない状態。

人でも国でも、一度死んで生まれ変わることが必要。

生まれ変わることで救いが得られる。

「堕落論」の最後で

「政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかない物である」

と安吾さんはいう。

政治家に救いを期待しても無駄なようだ。

安吾さんの言葉は厳しいが、正しく堕ちる勇気を与えてくれる。

 

有無相生

 

 

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