老子小話 VOL 1030 (2020.08.08配信)

古代から渦は、偉大なる母の子宮の象徴と

考えられてきた。

そしてそれは、生まれてくる意味と、

そこに引き込まれて死ぬという、

二つの意味を併せ持っている。

(河合隼雄、「ケルトを巡る旅」)

 

緑と妖精の国アイルランドが好きで9年前に

実際に一周してきました。

その時に読んだ本から言葉を選びました。

5000年前の古代ケルト遺跡ニューグレンジには

渦巻き文様が石に刻まれています。

河合先生は渦の意味を生と死と考えました。

渦に巻き込まれて、あれよあれよという間に

生まれ出て、渦に引き込まれて死んでいく。

台風の渦は空気の渦です。

渦の周りでは水蒸気を含んだ空気を引き込み、

渦の中心では引き込まれた空気が水滴の雲に

なるとき放出する熱で上昇気流は強まります。

渦の中心の上昇気流が生のエネルギーで、渦の

周りの引き込まれる空気が死のエネルギーと

考える事が出来ます。

死のエネルギーをもらって生のエネルギーに

変えているのが渦です。

陰陽のマークも白と黒で渦を構成しています。

老子の有(陽)と無(陰)の思想も、ケルトの渦に

似ています。

文字が生まれるはるか昔に、人類は肌感覚で、

生と死のエネルギーの流れを渦として捉えていた

のは驚きです。

そして渦模様でこの世の生起を表現しました。

日本でも古代ケルトよりはるか昔の縄文人が

土器に渦文様を刻んでいます。

川や海の渦、竜巻の渦を眺めながら、その神秘

に生命の神秘を重ね合わせる

文字を持たないからこそ、道の教えはすんなりと

心の奥に落ちていったのかもしれません。

 

有無相生

 

 

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