老子小話 VOL 1026 (2020.07.11配信)

生物は動的平衡にある流れである。

(福岡伸一)

 

最近、YouTubeで親鸞シンポジウムでの、福岡先生と

養老先生を交えた鼎談を見ました。

そこであらためて、動的平衡の意味を知りました。

生物は多数の細胞からなっていますが、生命維持の

ために体内に取り込む物質が、細胞を構成する物資と

常に置き換わっているそうです。

固定した自分というものはなく、自分は物質的に絶えず

更新されることで生命を保っている現実に支えられている。

これを科学的に実証したのが、ルドルフ・シェーンハイマー

という化学者だそうです。

平衡状態にあるというのは、新たな細胞の生成と古い細胞の

破壊(消滅)がバランスを保ち、生命が維持されているという

意味です。

老子が我々のうちにも道は働いているといったのは、こういう

ことなのかと気づきました。

有というのは生成、無というのは消滅とすると、生成と消滅が

バランスとれて万物がこの世に成り立っていると考えること

ができます。

つまり、有と無が相生まれて相互に依存しあうことが万物の

在りかたと考えるのが、老子第二章です。

更に無生物にも広げて、海の水が蒸発して雲となり、雲から雨

となって生物に潤いをもたらすことも動的平衡の一部になる。

人間社会において社会を活性化するには、人口の生成を活発にし、

人口の消滅も活発にするというのが自然の法則です。

しかし、人口の消滅は活発にできません。

しかも日本社会では出生率が低下し、人口の生成も鈍化しています。

したがって、将来の日本は社会を縮小し、低活性を維持するために

最低限の動的平衡を保つしか、生き残りの道はないように思えます。

人類史を考えれば、スペインやポルトガルやオランダのようにかつて

勢いのあった国も、今はそれなりの国におさまっているので、日本が

その仲間入りをしても何も不思議はありません。

福岡さん曰く、動的平衡は引き継がれていく。

従って日本が消滅してもその精神(あるいはあり方)は、次の新興国に

伝承されていくので、ご心配ありません。

動的平衡の道は永遠なり。

 

有無相生

 

 

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