老子小話 VOL 1025 (2020.07.04配信)

在途中不離家舍。

離家舍不在途中。

(禅林句集、臨済)

 

途中に在って家舎を離れず。

家舎を離れて途中に在らず

 

今回は「禅林句集」の言葉をお届けします。

この言葉は「臨済録」の一節をさらにまとめたものです。

家舎とは、ホームポジションで旅の出発点です。

ある人は人生の目標を決めて、その目標に向けて道を

歩みます。

途中とは、出発点から目標までの道のりの途中をいう。

しかし途中にあっても、本来の自己を脱却できていない。

つまり、家舎から離れることができない。

一方ある人は本来の自己を脱却し、家舎から離れたものの

途中にはいない。

途中にはいないとは、どういうことでしょうか?

出発点から目標までの道のりから外れてしまうと解釈する

こともできます。

この解釈だと、始めの「在途中不離家舍」との関係がはっきり

しません。

ところが、目標を自己に本来備わっている仏性をもって

生きることと考えると、途中であると思っていた今現在を

仏性をもって生きていれば、それは最早途中ではない。

家舎は本来の自己という出発点ですが、煩悩で自分の仏性が

覆われている状態です。

煩悩から脱却し仏性に覚醒すれば、その時点で目標は達成し、

途中の段階にない。

しかしその状態を維持するのが極めて困難で、煩悩はまた

すぐに心に湧いてくる。

その状態は、「在途中不離家舍」にいう通り、家舎にいる状態

と同じなので、目標を目指して歩む途中の状態に後戻りする。

今回の禅語は、仏性を取り戻す果てしない修業のプロセスを

述べているように思います。

目標を遠方に置くのではなく、今できることから始めるのが

大切です。

 

有無相生

 

 

戻る