◆老子小話 VOL
1024 (2020.06.27配信)
人皆生を楽しまざるは、死を恐れざる故なり。
死を恐れざるにはあらず、
死の近き事を忘るゝなり。
(兼好法師、「徒然草」第九十三段)
今回は「徒然草」の言葉をお届けします。
中野孝次氏の「風の良寛」(文春文庫)で見つけました。
訳すまでもありませんが、人生を楽しめないのは、
死を忘れているからだといいます。
自分以外の死、例えば家族の死や事故現場での死には
何度か立ち会えることもある。
しかし自身の死を体験できるのはただ一回です。
日常茶飯に忙しく追われていると、死というものを
忘れている。
しかし知らぬ間に死は近づいている。
自分の死に方を決めることが、自分の生き方を決める。
死の近き事というのは、死は突然訪れることを意味します。
その時に後悔しない生き方が望ましい。
「終わりよければすべてよし」で、死に臨んだときに自分が
満足いけば、それまでの苦難を受け入れることができる。
人生を楽しめるのは、目標に向かって着実に歩んでいると
思えるからだと考えます。
死という無の目標に向かって、心の世界を豊かにしていく。
心豊かに無を迎えられるようにする。
それが、「徒然草」の教えのように思います。
有無相生