老子小話 VOL 1023 (2020.06.20配信)

我々人間が皆島であって、

ただそれが同じ一つの海の中にある。

(アン・モロウ・リンドバーグ、「海からの贈物」)

 

今回はアン・リンドバーグの言葉をお届けします。

「海からの贈物」(新潮文庫)で見つけました。

アン・リンドバーグは大西洋初横断飛行した

チャールズ・リンドバーグの奥様です。

「海からの贈物」には、老荘的な考えが溢れています。

その一つが上の言葉です。

人間は皆海に浮かぶ島で、孤独な存在です。

島は空間と時間によって隔てられている。

島では過去と未来から切り離され、現在しかない。

現在の中だけで生きていることが、島の生活を

新鮮で純粋なものにする。

島を取り囲む海は、孤独な人間を包み込む大自然。

老荘的に見ると、海は「道」(Tao)と同じである。

道の教えが「海からの贈物」になる。

人間は誰も自分が孤独な存在と思いたくはない。

しかし、自分の孤独と向き合うことで、海という

大自然からいろいろな贈物を受け取る事が出来る。

人間以外の生き物の暮らし、それに恵みを与える

大地と海と空という自然に気づかされる。

他人と切り離すのは自分の心の砂漠で、自分が

自分に対して他人になるなら、他人に対しても

近づくことはできない。

自分の内的な泉を見つけて、心に潤いを取り戻し

始めて他人との繋がりをもつことができる。

この泉を見つけるには海と向き合うのが一番いい。

彼女は内的な泉を次のように表現する。

「回転していく車の軸が不動であると同様に、

精神と肉体の活動のうちに不動である魂の静寂」

老子第11章に出てくる、車輪のスポーク(輻)が

集まる車軸の穴と同じ、無の心です。

すべての偏見や価値観を捨てて、無の心で臨んで

泉を得る事が出来ます。

One should lie empty, open, choiceless as a

beach---waiting for a gift from the sea.

と原書では表現されています。

空っぽで、開かれ、選択できない、というなんとも

しゃれた表現です。

島が海と接するのが砂浜。

そこで無心で静かに寝そべっていると、彼方から

「海からの贈物」がやって来る。

 

有無相生

 

 

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