老子小話 VOL 1022 (2020.06.13配信)

民之難治、以其智多。

故以智治國、國之賊。

不以智治國、國之福。

(老子、第六十五章)

 

民の治め難きは、その智の多きを以ってなり。

故に智を以って国を治むるは、国の賊なり。

智を以って国を治めざるは、国の福なり。

 

今回は老子の言葉をお届けします。

数日前、ズームというビデオ会議システム会社に

中国政府から圧力がかかり、天安門事件に関わる

会合関係者のアカウントが停止されました。

天安門事件は、31年前に北京市天安門広場で

起こった民主化運動に対する中国共産党の

弾圧事件です。

中国国内では、この事件は歴史から削除されて

います。理由は、民主化運動は国家転覆行動に

あたるからです。

従って中国国内で天安門事件を検索しても、

当局の管制が入り何もヒットしません。

今回は、香港と米国内のアカウントが停止され

会合への妨害がされました。

それと老子とがどう関わるかというと、国民に

多くの知識を与えすぎると、国民統制が難しく

なると老子は言っており、中国政府はそれに

ならった形になっているからです。

共産党政治は、国民が共産党方針以外の考えを

持つことに恐怖を覚え、自治区での民族独立や

香港や自国内での民主化運動は弾圧します。

国民をできるだけ分断させ連帯を阻止しよう

とするため、SNSでの情報交換を管制し活動家

を徹底的に監視します。

老子の意図は、民の生活を豊かにするためには、

富や地位、そして衣食住への欲望を増幅する

情報を制限し、知足の生活を提供することでした。

80章で説く小国寡民が理想でした。

一方中国は大国多民ですから、国民に民主の自由と

引き換えに経済の自由を与え、経済的な欲望を

満たしつつ、共産党政治への不満は抑圧する策を

とっているわけです。

老子の今回の言葉は、

「国民に多くの知識を与えると統制しにくくなる。

知識によって政治をするのは国家の害で、

知識を抑制して政治をするのは国家の幸福である。」

となり、表向きは中国のネット制御を応援している

ように見えてしまうのが悲しいところです。

 

有無相生

 

 

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