老子小話 VOL 1018 (2020.05.16配信)

善縁にあへばよくなり、

悪縁に近づけば、悪くなる也。

我が心、本よりわるしと思ふことなかれ。

只、善縁に随ふべき也。

(正法眼蔵随聞記)

 

今回は、道元の言葉をお届けします。

「人の心は元より善悪なし」で始まる章に

出てくる言葉です。

人間生まれてくるときはまっさらな心で

生まれてくるので、そこには善も悪もない。

善悪は縁に従っておこる。

心は縁にひかれて変化するので、縁次第で

善にも悪にも変わりうる。

性善説でも性悪説でもない。

性変説の立場を取ります。

人間は他人の言葉に左右される。

立派な人の言葉に常に触れていると、

悪い人も立派な心に変わってくる。

逆に立派な人でも最初は悪いことだと

知りつつも、悪い人の言葉に従っている

うちに、本当の悪い人間になってくる。

縁とは自分が身を置く環境で、環境次第

で人の心は変化するという厳しい現実を

指摘する言葉です。

しかも、その変化に自分は気づかない。

「朱に交われば赤くなる」ということわざ

も、変化する自分の心を戒める言葉です。

仏道を修行する場合、最初道心はなくても、

すぐれた師の言葉や行い(善縁)に触れる

うちに道心は芽生えると道元は言います。

反対例が今の政権与党のようです。

コロナ対策のどさくさにまぎれて、

検察庁法改正案の強行採決を辞さない

安倍内閣ですが、その勢いに押されて、

反対意見の出ない与党になっています。

長い物に巻かれろという立場です。

悪いと知りつつ従っていると、自分が

悪に染まっていることに気づかない。

道元の言葉は、いつでも修正できる心

の大切さを教えてくれます。

 

有無相生

 

 

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