◆老子小話 VOL
1012 (2020.04.04配信)
薪灰となりぬるのち
さらに薪とならざるがごとく
人の死ぬるのちさらに生とならず
(道元禅師、「現成公案」)
今回は道元禅師の言葉をお届けします。
コロナ災禍で志村けんさんが亡くなりました。
昨日追悼番組を見ましたが、付き人としての
下積みから、メンバー脱退に伴い新メンバー
に抜擢され、そのチャンスを確実にものにした
経緯がわかりました。
道元の言葉は訳すまでもなく、灰になった薪は
もとの薪には戻らない、つまり時間はもとに
戻らないことです。
しかし、言いたいことは薪ではなく、人間の生
のことです。
死んでしまったら、生き返ることはない。
当たり前のことです。
もちろん残された者の心に大切な人は生きている。、
しかし道元の言うのは、死のうとしている本人の
生き方です。
今一刻が過ぎ去ろうとしている今は戻ることはない。
だから過去や未来にとらわれることなく、今現在を
真剣に生きろと教えています。
道元禅師の素晴らしいことは、薪を使ってそのこと
を教える点です。
身近に見られる現象を用いて、本質を言う所です。
志村さんの人生も薪そのものです。
志村さんがヘビースモーカーだったことが重症化を
招いたと取り沙汰されていますが、本人にとって
タバコは憩いの手段であり、今を生きるための手段
に過ぎず、悔いのない人生を送られたと察します。
有無相生