老子小話 VOL 1006 (2020.02.22配信)

夫物量無窮、

時無止、分無常、

終始無故。

(荘子、秋水篇第十七)

 

夫れ物の量は窮まりなく、

時は止まるなく、

分は常なく、

終始は故なし。

 

今回は荘子の言葉をお届けします。

「分」とは、分相応というように、

万物それぞれに与えられた境遇のこと。

「故」とは昔の形であり、旧態のこと。

訳してみると、

「万物の量は無限に大きく計り知れず、

時間は一瞬も止まることなく、

与えられた境遇は一定不変ではなく、

一切存在は生成と消滅を繰り返し、

旧態を維持するものはない。」

これはもう無常感という感傷的な言葉

ではありません。

大小・長短・貴賎という差別に卑屈に

ならず、無限に遠大な流転の渦の中に

自ら身を投げて、変化していく境遇を

を楽しもうというものです。

最近、今年のアカデミー賞を受賞した、

韓国映画「パラサイト」を見ました。

この映画は、富裕家庭に寄生して行く

極貧家族の顛末を描いたものです。

当初は計画通りにお屋敷に潜り込める

のですが、いろいろなハプニングが

起こり、計画通りに行かなくなる。

その時、父親が、

「人生計画通りに進まない。むしろ、

無計画なほうがいい」と言う。

この言葉は捨て鉢な言葉に受け取られ

がちですが、流転の渦に積極的に飛び

込もうという意志が感じられます。

飛び込む際何が支えになるかといえば、

家族の絆じゃないかと思います。

この映画は、多面的に考えさせる映画

でした。

荘子の言葉に戻ると、差別に囚われずに

変化の中で絆を結んで、逆境を越えよう

と背中を押す言葉に思えてきました。

 

有無相生

 

 

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