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梓由美が、東京都内のK女子高校から東北の地方都市にある聖愛女子学園に特別編入の扱いで転校してきたのは高校3年の秋のことであった。 親の転勤の為というのならまだしも、高校3年になり、しかも高校生活も残すところ半年を残す秋の段階で他校に編入するのは極めてめずらしいことである。しかしこれには事情があった。 梓由美は両親が会社を経営する裕福な家庭の次女として育った。また高校もお嬢様学校として有名な私立のK女子高の生徒だった。 もともと頭の良く、成績も常に上位の方である由美だったが、高校2年生の夏頃を機に、徐々に生活が乱れはじめていった。友人と遊びにいった渋谷で、とある暴走族の少年に声をかけられたのである。このことが由美が暴走族とかかわりはじめるきっかけとなった。 とはいっても由美は特別に少年に対して好意を感じていたわけではなかった。ただ暴走族の少年達とほんの興味本意のつもりでかかわりあいたかったのである。規則のきびしいK女子高の生活に飽き飽きしていた由美にとって、暴走族とのつきあいは息抜きの場でもあった。少年とともにバイクにまたがり深夜爆音をとどろかせ幹線道路を疾走するスリルはたまらないものであった。深夜の暴走行為にのめり込んでいくのにそれほど時間はかからなかった。 由美が暴走族にのめり込むのにはもう一つ訳があった。細身でスラっと背の高い由美に黒の皮ジャンパー姿はひじょうによく似合った。高校生とは思えない大人っぽい顔立ち、そしてソバージュのかかったしっとりした髪を風になびかせ疾走する由美の姿は暴走グループの多くの少年達から羨望のまなざしでみつめられていた。 もともと勝ち気な性格の由美にとって、グループの中で一目おかれるのは悪いものではなかった。このことも由美が暴走族にのめり込んでいった理由のひとつかもしれない。 だが当然のことながら由美の学校での成績は、徐々に落ちはじめていった。一方、夜になっても帰ってこない娘の挙動に両親はなすすべもなく、ただ気をもむだけだった。 それでも由美は学校には知られないように、この深夜のスリルを味わうつもりだった。せめて高校だけは卒業したかったからである。 しかしいつまでもいいことは続かなかった。由美が高校3年の秋を迎えた頃、ついに由美が暴走族から決別せざるを得ない事態がおこったのである。 ある日、由美の所属する暴走グループと対立グループとの間で乱闘騒ぎが起こった。ところが運の悪いことにその乱闘現場を警察にとり押さえられてしまったのである。 もっとも由美は好んで乱闘に参加したわけではなかった。たまたま仲間の運転するオートバイの後ろにまたがって夜の町を疾走しているところを対立関係にあった暴走グループと鉢合わせしてしまったのである。因縁をつけてきたのも相手であったし、由美たちもできれば乱闘は避けたいところであったが、一方的に鉄パイプを持って迫ってくる相手に由美たちも正当防衛的に応戦せざるを得なかったのである。 警察に由美達が押さえられたのはおりしも乱闘が始まる寸前であった。おそらく騒ぎを目撃したものが警察に通報したのだろう。 乱闘直前に警察が介入したのは由美にとっては不幸中の幸いだったかもしれない。もし乱闘中に警察に取り押さえられていれば、由美達はまちがいなく傷害罪で逮捕されてしまっていたことだろう。幸い乱闘前だったので、由美達が逮捕された罪状は「凶器準備集合罪」であった。 それが功を奏し、由美だけは初犯ということもあって今回は不起訴処分となり、一命をまぬがれた。しかし他の由美の仲間は以前にも警察沙汰を起こしていたこともあり、ほとんどのメンバーが少年院送致となってしまった。 この事件が契機となり、由美がよりどころにしていた暴走グループも解散状態となってしまった。もっとも由美はグループ自体に対し、さほど未練を抱いてはいなかった。 彼女にとって夜の暴走グループとのつき合いは、堅苦しい学校生活の息抜きの場のようなものだったからである。それよりかは、むしろ、あと半年たらずの高校生活をがんばってやり通して、高校だけは卒業してしまおう。そうすれば後はバイトでもしながらゆっくり先のことでも考えられるではないか。 しかし由美にとってたいへんショッキングな事態が起こってしまったのである。実は由美自身も心配していたことだったのであるが、今回の事件が由美の通っていたK女子高校にも知れ渡ってしまったのである。 K女子校が由美に課したのは退学という重い処分だった。済んでしまったこととはいえ、由美は自分が招いた愚かさに後悔した。勉強はそんなに好きではなかったが、やはり世間並みに高校だけは卒業しておきたかったからである。それも卒業まで残すところ半年をきっての退学処分はじつにもったいなく、ますます由美の後悔の度合いを大きくした。 もっともこれは由美の両親とて同様であった。とくに世間体を気にする母親はこのたびの由美の失態をはげしくなじった。そんな母親の態度に由美はますます両親を嫌悪し、また自分の将来のことを考える意欲もなくしていった。 ところがここで思わぬ話がK女子校の学長より舞い込んできたのである。 たしかに由美はK女子校を退学となってしまったが、それは理事会で決められたことである。ところがK女子校の学長自身は由美の退学処分には反対であった。というのも学長は由美の父親とは同じ大学卒の同期の仲だったのである。また由美の父親からはどうか退学処分だけは免れるよう強く懇願されてもいた。 しかし、理事会で理事長以下多くの役員が由美の退学処分に賛成したとなっては、学長だけが反対の姿勢をつらぬくわけにも行かなかった。それゆえ、学長は由美の父親に対し非常に心苦しさを感じていたのである。 そこで学長は由美の父親に対してあるひとつの提案を行った。学長の知り合いで東北の地方都市に聖愛女子学園という幼稚園から大学まで一貫教育を行っている女子校を経営しているものがいるというのである。 そして学長の提案とは、自分からその経営者に掛け合って由美を聖愛女子学園の高等部に途中編入させて高校を卒業させようと言うのだ。しかも成績が基準点を満たしていればそのままエスカレーター式に大学にも進学できるというのである。また同学園はそんなに学力重視の方針ではないので今の由美くらいの学力であれば、じゅうぶん大学まで昇ることもできるというのである。 この話は由美にとっても彼女の両親にとっても渡りに舟の話であった。 「どう、由美ちゃん?。これは本当に絶好のチャンスよ。あと半年足らずのがまんだから、ここで高校卒業してしまわない?。それにあなたが退学になったK女子よりこちらの学校の方が校風も自由だし、制服もかわいいわよ。」 この両親の話に普段は反抗的な態度をとる由美もけっして悪い気がしなかった。彼女自身も高校だけは卒業してしまいたかったからである。 それになんといっても校風が自由というのにも強くひかれた。学校の案内パンフレットも見せてもらったが、校舎も瀟洒な明るい雰囲気の建物だし、制服も地方都市の高校とは思えない、一流デザイナーの手によるものだ。黒づくめでやぼったいK女子校の制服とはえらい違いである。 また遠隔地から通う生徒のための寮も完備されており、そこも規則はあまりやかましくない、とのことだった。 それになんと言っても、4ヶ月ほどの通学で高校卒業の資格を取ることができるのである。そんなわけで由美が聖愛女子学園への編入を決断するまでにそんなに時間は要しなかった。 だが、K女子の学長や両親が聖愛女子学園への編入を由美にすすめたのはもうひとつ、由美には隠された訳があったのである。 実はこの聖愛女子学園には女子の一貫教育とは別に、非行に走った少女たちを学園独自のノウハウで立ち直らせるという教育方針で、一部では有名だったのである。それもどんな手もつけられない不良少女でも、かならず半年から1年以内には心身共に更正されるというのである。寮を完備しているのも、親からも見放されたような不良少女を預かるという目的もあったのである。 だが、K女子の学長も具体的にどのような指導方法で子供を更正させているかは知らなかった。学長は由美の退学処分を免れなかったうしろめたさから、よく確かめずに聖愛女子学園を両親に紹介したのであった。また両親も由美が非行から立ち直ってくれればなんでも構わない、という安易な気持ちで、学長の申し出を深く考えずに受けてしまった。 このことが由美にとって不幸の始まりになろうとは知るよしもなかった。ましてや、これから自分にどんな境遇がふりかかろうかなど、学校案内をみて有頂天になっている由美には想像すらできなかった。 そして由美が聖愛女子学園に 編入する日がおとずれた …… 由美が両親とともに東北の地方都市にある聖愛女子学園をおとずれたのは、秋も深まった十一月のある日のことだった。ちょうどその二週間ほど前、由美の元へ聖愛女子学園から編入と入寮にあたっての心得が送られてきた。 それを読むと、由美は無試験で聖愛女子学園の高校3年生に編入可能とのことだった。もちろんこれはK女子の学長から、梓由美には一定の学力がそなわっている、との特別な推薦書きをもらっていたからである。これにより由美は来年3月までの約4ヶ月をこの学校で過ごせば、晴れて高校を卒業できるのである。入寮心得も読んでみると、通学時と学校内にいる間以外は服装も自由だし、全寮制にありがちなうるさい規則もないようだった。 しかも一定の成績基準を満たせば、そのまま同じ学園の女子大にもエスカレーターで進学できるということであるが、これについては由美は高校だけ卒業したらまた東京に帰って自由な生活を送るのも悪くない、と考えていた。女ばかりの女子大に行くよりかは、バイトしながら男の子達と適当に遊んで暮らす生活の方が由美にとっては魅力的であった。「そのためにも高校だけは卒業しておかなくちゃあ。高校中退のまんまじゃ、いいバイトにもつけないからなぁ。」そんな軽い気持ちで聖愛女学園への編入に応じたのである。 由美はこれから約4ヶ月ほどの学校生活に胸をふくらませ、両親とともに学園の正門の前に降り立った。聖愛女子学園は案内パンフレットの写真のとおり、白亜の瀟洒な建物だった。音楽の授業をしているクラスがあるのだろうか。すきとおったようなコーラスが校舎のどこか遠くの方から聞こえてくる。しかし由美達が学園に到着したのがちょうど1時限目の授業中であったためか、生徒の姿は校舎の外には見あたらなかった。 受付で来意を告げると、由美と両親はすぐに学園長室に通された。学園長室は瀟洒な校舎とは対照的に、古めかしい調度品が並べられた重々しい雰囲気のする部屋であった。 学園長が現れるのを待つ間、やはり古めかしいソファに腰をかけながら、なんとはなしに由美は壁に飾られた歴代の学園長の写真をながめていた。明治時代の開校という歴史ある学園らしく、その頃から現代にいたるまでの約十人ほどの歴代学園長の写真が飾られていたのであるが、由美はあることに気づいた。どの代の学園長も女性ばかりなのである。学校長にあたる立場の人というと男性をイメージしていた由美にとっては意外であった。 ちょうどその時ガラッと扉が開き二人の女性が入ってきた。 「意外だったでしょう.当校の学園長はみんな女の人なのよ。」 壁の写真をながめていた由美を見てとったのか、一人の女性が答えた。グレーのスーツに身をつつんだ均整な長身の女性であった。歳は四十代なかばくらいだろうか、けれども顔立ちのはっきりした、気品を感じさせる女性だった。 「私は山村理恵。当校の学園長です。うちの学園は園長だけでなく教職員にいたるまで全員女性なんですの。」 「ほう、そうですか。」 由美の父親が少し驚いたように答える。 しかし学園長である山村女史は父親には一瞥をくれただけで、再び由美に語りかけた。 「由美さん、ようこそ当学園にいらして下さいました。K女子校の学長からも事情はよくうかがっております。」 自から招いたこととはいえ、触れられたくない過去のことをいきなり口にされ、由美は返す言葉に一瞬つまってしまった。しかし由美のそんなとまどった態度にはおかまいなしに山村女史は話をつづける。 「あっ、それからこちらは寮長の岩松サエさんよ。これからあなたがこの学園を卒業するまでの間、寮での生活全般の面倒を見て下さる方。よろしくね。」 「由美さん、よろしく。」 岩松サエは軽く由美と両親に一礼した。 サエは黒いパンツスーツに長い髪を後でひとつに束ね、女性にしてはがっしりした体格の持ち主だった。身長もゆうに180センチは越えているようだ。年齢は三十代後半といったところか。大きな瞳が印象的だ。 しかし両親は気づかなかったが、由美にはサエの瞳になんか冷たさを感じていた。いや、冷たいというよりかはむしろ底意地悪そうな目といった方が近いだろうか。。サエに対してなにか底知れぬ不安な気持ちを由美は感じた。 だがそんな由美の不安を打ち消すように、 サエは両親と由美に明るく語りかける。 「さきほど山村学園長も申されましたが、当学園が教職員とも女性ばかりというのは、女生徒に対しては純粋に女性の立場で理解し教育を施すという当学園の方針なんですよ。 ねぇ由美さん。あなたのこれまでの東京での生活から考えるとちょっと違和感があるかもしれないけど、高校3年秋からの編入じゃない。卒業までちょっとだし、私たちの学園でがんばってみようね。すてきに生まれ変われるよう私たちも一生懸命サポートするわ。」 「由美さん、岩松先生もそうおっしゃって下さっているわ。それに当学園はとても自由な校風よ。学校生活もきっとのびのび楽しめることと思うわ。ぜひがんばって下さいね。」 山村女史もにこやかに由美の手を握りしめ、そう声をかけた。 女史の言葉にも助けられ、サエの目に感じとった不安な気持ちも由美の心からだんだん遠のいていった。 (どうせあと少しで卒業したらこの学園とはおさらばだわ。)と由美は心では思ってはいたが、それはおくびにも出さず、 「よろしくお願いします。短い期間ですけれども一生懸命がんばります。」 と深々と頭を下げた。両親も頭を下げた。 しかし『短い期間ですけれども…』と彼女が口にした時、山村女史とサエがかすかに目を合わせ、含み笑いを浮かべたことを由美も両親も気がつかなかった。 その後、由美を同席させたまま両親と学園長との間で由美の編入や授業料支払いに関する事務的な手続きが執り行われた。 そして10分ほどで手続きが終わると、両親・由美ともに聖愛女子学園編入の同意書にサインを求められた。先にペンを渡されたのは由美であった。 由美に対する編入同意書には次のように記されていた。 ──────────────────── 1 私は聖愛女子学園(以下、同学園)の建 学の精神にのっとり、勉学に励みます。 2 私は過去に犯した自分の過ちを悔い改め、 同学園を卒業するまでに更正できるよう 人間形成に努めます。 3 私は同学園の児童一員として校則を尊守し、 職員の指示に素直に従います。 4 私が卒業資格を満たす授業単位を取得で きなかった場合(学力がそなわらなかっ た場合)、留年することにより卒業資格に 必要な単位取得に励みます。 5 私が卒業時点までに更正や精神的成長に 於いていちじるしい遅れがあると判断さ れた場合は素直に認め、留年し同学園の 教育方針に沿って人間形成に努めます。 ──────────────────── この同意書に目を通したとたん、由美の美しい顔にとまどいの表情が浮かび、サインしようとペンを持った右手がかすかに震えた。編入に当たっての心構えを持たせる目的もあっての同意書だから、ある程度 建前として書かれているのは由美にもわかる。ただそれにしても3番目に記された『児童』という言葉が由美には奇異に感じられた。由美は高校3年での編入で、しかも18才の誕生日をすでに過ぎているのである。普通、高校生に『児童』という言葉を使うだろうか。 「あら、由美さん。どうなさったのかしら?。なんか浮かないお顔をなさっておられるようだけど …… 。」 山村女史が由美の顔をのぞきこむようにたずねる。 「いえ、ここの3番目のところに『児童』という言葉が書かれていたので、ちょっとびっくりしてしまいまして …… 。」 「あぁこのこと?。ぜんぜん気にすることないのよ。由美さんはご存じないかもしれないけど、日本の法律に児童福祉法というのがあってね。この法律の第四条では満18才に満たないものを児童と定義付けてるのよ。もちろん由美さんは18才を過ぎているからもう“児童”じゃないんだけど、うちの学園は子供の人権を守るという教育方針から、一応この児童福祉法にそって、高校卒業までの生徒を一応“児童”と呼んでるの。別に高校生を幼児扱いしているわけじゃないから安心してね。」 「そうだったんですか… 。」 由美は少し安心したかのようにうなづいたが、まだ顔からはとまどいの表情が消え去ってはいなかった。山村女史にはその理由がわかっているようで、なおも話をつづけた。 「それとついでに解説しておくとね。この4と5番目の留年についてなんだけど、これはどんな児童でも卒業まで必ず面倒を見る、という当学園の姿勢の表れなんですよ。特に最近はやっかいな子供をすぐに退学処分などで放り出してしまう学校が増えていますが、本当に嘆かわしいことです。そんなことしたら立ち直れる子まで自暴自棄になってしまいますよ。ねぇ、由美さん?。」 山村女史は微笑みながら、とまどいの表情を浮かべている由美に同意を求めた。もちろんこの言葉の裏には、少し非行に走ったからという理由で、由美を退学処分にしたK女子校への非難も込められてはいた。 山村女史は聖愛女学園は子供を簡単に見捨てるようなことはしない、ということを暗に言いいたかったわけで、由美にもそれはわかったのだが、それにしても由美がとまどうのも無理からぬことであった。万が一、学力や更正面で『遅れ有り』と判断されたら留年ということではないか。それではさっそと卒業してこの学園とおさらば、という予定が大きくくるってしまう。だいいち最初にK女子の学長から話があった時は留年制度のことなぞ聞いていない。 そんな由美のとまどいの気持ちを察してか、サエが由美の不安を吹き飛ばそうとするかのように笑いながら解説をつづけた。 「あら由美さんなら大丈夫よ。うちの学園はK女子より偏差値は低いから、由美さんが学力でついていけないってことはまずないから安心なさい。そもそも今回の編入はK女子の学長さんから成績面でのお墨付きもあって編入が実現したんだから。」 「そうですか ……。」 少し安心するかのように由美は答えた。きっとK女子の学長も梓由美ならまず留年する成績などとるまい、という安心感からあえて留年制度があることには触れなかったのだろう。 それに留年制度は私学ならどこの学校にもあるものだ。由美はそう思うことにした。 「それにね由美さん、更正面のことだけど、ちゃんと当学園の規則や先生の言うことをきいて真面目に学園生活を送ってもらえればなんの問題もないのよ。まさかあなただって、いつぞや警察のご用になった時のような暴力沙汰や暴走族の仲間入りはもうなさらないでしょう?。」 山村女史にそう言われると由美も弱かった。なりゆきとはいえ、K女子校を退学になっても文句の言えない行為である。 「はい、もちろんです。」由美はあわてて答えた。ふたたびサエが二人の会話に割って入る。 「由美さん、ようするに普通の高校生らしく学園生活を過ごしてもらえれば、更正面でマイナスになることはないのよ。それに校則だってうちはK女子校のようにやかましくないし、とても自由な校風よ。お友達とも仲良くして学園生活をエンジョイしてね。」 (ふん、エンジョイなんて言葉、死語だぜ。)由美は心の中で笑いながらも、この説明で留年制度に対する不安はなくなった。よほどの素行やテストで悪い点数でもとらない限り、留年は関係ないらしい。どうせ4ヶ月で卒業できるのだ。少しがまんして卒業さえすれば、 また東京に戻って自由な暮らしを満喫できるのだ。 「わかりました。 同意書にサインいたします。」 意を決して由美は同意書の下の欄にサインのペンをすぺらせた。続いて両親にも親の立場としての同意書にサインを求められた。両親の同意書には、 ・聖愛女子学園の教育方針を信頼し子供を預 けること。 ・子供が同学園を卒業するまでは、学校の教 育方針に口をはさんだり干渉しないこと。 ・特別な理由がない限り、卒業までは子供と の面接は遠慮すること。 などが記されていた。 卒業するまでの面会禁止は、子供に余計な里心を植えつけない為であるのと、卒業までのカリキュラムに集中してもらう為と説明された。 もっとも両親はこれでやっかいな娘が更正してくれる、という安心感から一も二もなくこの条件を承諾し、同意書にサインのペンを走らせた。面会はできなくても半月ごとに子供の状況は学園から通知されてくるということであるし、更正の為ならむしろ1年くらい留年してでもこの学園で娘におとなしくしてもらった方が安心、かえって昔の不良仲間と接触する機会もあるまい、という気持ちであった。 しかし山村女史は、そういう親の態度に嫌悪感を感じていた。 (こんな無責任な親だから娘が非行に走るのよ。)同意書にペンを走らせる両親をながめながら山村女史は苦々しく思った。娘が非行に走る原因は必ず家庭や親にある、というのが山村女史の持論だった。 (うちの学園に子供を預ければそれでおしまい、と思っているんだから …… ) (もっともこういう無責任な親のおかげで、こちらも楽しめるんだわ。)山村女史とさえが再び視線を合わせかすかに微笑み合ったことに、両親も由美も気づかなかった。 「有り難うございます。由美さんは当学園の方で責任を持って預からしていただきます。」 山村女史が両親に向かって深々と挨拶した。 「いえ、こちらこそ娘をよろしくお願いいたします。由美、頑張るんだぞ。」 両親は長椅子から立ち上がりながら言った。 しかし由美は両親の方を振り向こうとはしなかった。由美自身も世間体ばかり気にする両親の考え方には嫌気がさしていたのだ。 東京に帰る為に学園長室を出る両親の後ろ姿を、由美は視線も合わさず黙って見送った。 (どうせ4ヶ月でこの学園を卒業できるんだ。そしたらまた東京に戻ろう …… ) 「じゃあ由美さん、今日の日課を簡単に説明しておくわね。」 サエは由美の両親が部屋を出ていくのを確認し終えると、由美に向かって言った。 「今日は由美ちゃんも疲れているでしょう。だから授業の出席は明日からでいいわ。けれどもね、今日のうちにあなたの進路確認をしておかなければならないのよ。」 「えっ、進路確認ってどういうことなんですか?」由美が尋ね返す。 「うちの学園は高校3年になると大学進学コースと就職コースに別れるのよ。まあ、どちらを選択するかは今あわてて決めなくてもいいんだけれども、由美ちゃんの場合は通常のコースに更正カリキュラムも加えなくてはいけないの。その理由は由美ちゃんが一番よくわかっているわよね。」 由美はサエが口にした“更正カリキュラム”という言葉に、なにか言いしれぬ不安を一瞬感じた。 「更正カリキュラムって一体なんですか?。確かに前の学校を退学になるようなことをした私も悪かったです。けれどもそのことについては私もじゅうぶん反省しています。二度と同じあやまちはおかしません。暴走族に入ったりはいたしません。」由美も負けずに言い返した。しかしサエの説明によると、いくらK女子の学長からの紹介とはいえ、高校3年秋からの編入は異例のことらしいのである。高卒の資格取得だけでなく更正を目的にしていないと、聖愛女子学園への編入は建前上、認められないというのである。 しかし由美は納得がいかなかった。 「けれども私、更正カリキュラムを受けねばならない、なんて話しは事前に聞いていません。そういうことであれば、編入前にそれなりの説明があってもよいのではないでしょうか?。だいいち更正面については、真面目に学園生活を送ってもらえればなんの問題もない、とつい今おっしゃったじゃないですか。」 由美は両教官になおも問いつめた。サエは(困ったわ)という表情を浮かべながらも、にこやかに説明を続けた。 「実を言うとね。あなたの編入に反対の理事もいたのよ。けれども山村学園長があなたの編入は高卒の資格を取るためじゃなくて非行からの更正が大きな目的なんだ、と理事会の席で頑張ってくれたの。だから編入も認められたのよ。だから形だけでも更正カリキュラムも受けてもらわないといけないの。由美ちゃんはいい子だからわかってくれるよね。」 いつのまにかサエの口調は幼児に向かってしゃべっているような話し方に変わっていた。しかもいつのまにか“由美さん”から“由美ちゃん”と呼び方も変化している。二人のやりとりを黙って聞いていた山村女史が、ここで初めて口を開いた。 「更正カリキュラムと言っても、そんか大げさなものじゃないのよ。由美ちゃんが卒業するまでの授業や学園生活の中で、由美ちゃんが意識しないうちに自然に更正できるプログラムが組み込まれているの。だから由美ちゃんはそんなに深刻に考えなくてもぜんぜん平気なのよ。」 「そのようにおっしゃられてもよく分かりません。どんなカリキュラムなのか、もっとくわしく説明していただけますか?」 「当学園の更正カリキュラムは創立以来50年の伝統の中で組まれたものなのよ。これについて口で話してもまる一日以上かかるわ。むしろ今日、明日の二日間とにかく学園生活をおくってみて下さいな。そしたら由美ちゃんも安心すると思うわ。」 「そうでしょうか? …… 」 由美はまだ、いぶかしげな表情を浮かべていた。 「そうですとも。言い訳みたいに聞こえるかもしれないけど、編入前に更正カリキュラムについてお話しなかった理由はね。実際に学園生活を経験していない子にその説明をすると、うちがまるで少年院みたいな矯正施設のように誤解されやすいからなのよ。由美ちゃん、わかってね。」 しかしそのようにサエに言われても、由美は素直に二人の教官の言葉を素直に受け入れられなかった。 (どうもおかしい。最初の話では自由な校風とか四ヶ月で卒業できるような話だったのに、留年もあるようなことをほのめかしたり、更正カリキュラムを受けろなんて言い出すし。ちょっと話が違うんじゃないかしら?) 由美の心の中で消えかけていた不安感が再びくすぶりだした時である。学園内全体に二時間目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。由美たちが聖愛女子学園に到着してからすでに1時間が経過していたのである。 休み時間に入ると、静寂を保っていた校舎内ににぎやかな女生徒たちの声がこだましはじめた。ほどなくして学園長室の扉を軽くノックする音が由美たちの耳に届く。 「どなた?」 「保健委員の三年B組 水野京香です。保健室の相原先生から健康診断の用意ができたので編入される方をお連れするようにいわれたんですが… 。」 「あら、もう用意できたの。早かったわね。」 サエは京香に語りかけながら由美を紹介した。 「由美さん、紹介するわ。こちらは保健委員の水野京香さん。寮でもあなたの世話をしてくださる子よ。仲良くしてね。」 「京香さん、はじめまして。」 由美は軽く水野京香に会釈した。京香はいかにも今風の女子高生らしい装いであった。モスグリーンのチェック柄のミニスカートに袖を折り曲げたカッターシャツ、白のVネックセーターに深紅の胸リボンがまぶしい。足元は紺色のハイソックスに水色のスニーカーの上履きという着こなしは地方都市の高校生には見えない。セミロングの少し茶色に染めた髪もなかなか服装に似合っていた。どうやらこの学園はヘアスタイルについても、いたっておおらからしい。 「京香ちゃん、今日はなかなかおしゃれな着こなしね。由美さん、うちの高等部の制服なかなかおしゃれでしょう。うちは自由な校風だから、みんな個性豊かな着こなしを楽しんでいるの。」 サエの言葉に由美も思わずうなづいた。事前にもらった学園の案内パンフレットでもこの 制服のことは知っていたが、実際にそばで見ると本当にハイセンスな制服だ。由美が以前いたK女子校とはえらい違いだ。 「じゃあ由美ちゃんには健康診断に行ってもらうわ。京香ちゃん保健室へ案内してあげてね。」山村女史もにこやかに言った。 健康診断は編入してくる子供の健康状態を把握する為にも、預かる側の学園として必ず必要なことであった。特に寮で親元から離れた子を預かるという責任上、学校側が生徒の健康上の問題点は知っておかなければならないのは言うまでもない。これは由美も当然納得できた。 「じゃあ由美ちゃんの制服は健康診断の間に用意しておくわね。で、健康診断終わったらちょうどお昼だから由美ちゃんが編入するクラスにお連れするわ。あっそうそう。それから由美ちゃんの私物の入ったトランクは、先に寮の方に運んでおいてあげます。」 「えっ山村先生、よろしいのですか。トランクまで運んでいただいて…。なんか申し訳ないです。」 由美はすまなそうに答えた。 「いいのよ由美ちゃん。それに健康診断が終わったら、かばんや教科書も渡さなくちゃいけないし、とてもトランクと両方持って帰れないわよ。」 確かに教科書がなければ明日からの授業に支障がでる。ついでサエが思い出したようにつけ足した。 「あっ、由美ちゃん。あとハンドバックも置いてってね。」 「あの、バッグは持たせて下さい。大事なものも入っていますし …… 。」 しかしその由美の言葉を、意外なことに保健委員の京香がさえぎった。 「保健の相原先生が保健室には何も持たないで来てもらうようにっておっしゃってましたよ。いろんな検査で移動が多いのとレントゲン撮影もあるからなんだそうです。」 移動が多いほど広い保健室なんだろうか。(なんだか病院みたい。)と心の中で思いながらも、レントゲンまで撮るのなら手ぶらの方が面倒でなくていいみたいだ、と由美は納得した。 「ハンドバックはトランクといっしょに、寮の方に運んでおいてあげます。」というサエの言葉もあり、由美は安心して京香とともに何も持たずに保健室へ向かった。 そして由美達が 学園長室を出ていったあと …… 扉が閉まり、由美と京香の足音が学園長室から遠のくと、山村女史と岩松サエの二人の口から嘲笑があふれ出た。最初に口火を切ったのは山村女史の方だった。 「あの由美って子、なかなか気の強そうな目をしてるわよね。」 「そりゃぁ、なんて言っても元暴走族に入っていた子ですからね。」 「でも私、ああいう気の強そうな子って好きよ。」 「そうですね。それに大人っぽい雰囲気の子ですから、なかなか“変え”がいありそうですわ。でも学園長、あの子は意外と警戒心が強いようですね。うちの更正カリキュラムのことで、あんなに問い詰めてくるとは思いませんでしたわ。」 「そうね。サエさん、今度は大阪からの編入生の時のようなヘマはしないようにしましょう。」 「あぁ、加奈子ちゃんの時のことですね。あの時はどうなることかと思いましたわ。もう少しでうちの学園のことが外に漏れるんじゃないかと、ひやひやものでした。」 「今度はだいじょうぶでしょうね。保健の相原先生とはちゃんと打ち合わせしてあるわよね?。」 「えぇ、ご安心下さい。加奈子ちゃんの時は彼女の私服ぜんぶ処分したつもりだったのですが、一着だけ寮の部屋に残っていたんです。なんでも友達に貸していたのが戻ってきたものらしいんです。それですきをみて“制服”から着替えて逃げ出そうとしたんです。幸い駅で切符を買おうとしたところに追いついて取り押さえられましたけれども。」 「サエさん。今度はそういう失敗は許されませんよ。絶対に由美に逃げ出すすきを与えないようにしてしまわないと …… 。」 「だいじょうぶです。今回は身体検査の時に衣服をいったん全部 脱がすようにします。そこから後のことは相原先生と計画を立てています。由美は嫌でもあの“制服”を着ざるを得なくなるでしょう。」 「全部脱ぐかしらね。」 「相原先生はレントゲン撮影の時ならそんなに不審がらずに脱ぐだろう、と話してましたわ。」 「でも問題はあの“制服”を着せる時よ。加奈子ちゃんの時だって、あの子ったら『こんな制服いやだー』ってさんざん泣きわめいて大変だったでしょう。」 「そりゃぁ学園長、『あの制服を着ろ』って言われたら誰だって抵抗しますわ。うちの中学一年生の児童だって、時々懲らしめで着せた時みんな恥ずかしさで泣き出すくらいです。ですから、高校卒業間近の由美ちゃんにとってはとても耐えられないことでしょうね。でも相原先生もそこのところは心配されていまして、いざという時のことも考えて保健委員の京香ちゃんにも立ち会わせるみたいです。」 「京香だけだと心配だわ。サエさん、あなたも立ち会いなさい。あの“制服”を見たとたん嫌がって暴れ出しかねないわよ、あの子 ……。」 「わかっております。けれども最初から私が立ち会って彼女に変に警戒されてもマイナスですから、とりあえず隣の部屋の監視モニターで彼女の様子に注意しています。学園長もご一緒に、彼女が無理矢理に変身させられる様子をご覧になってみれば?。」 「ほほほ… 、見てみたいところなんですけどね。ほら、彼女の衣服や持ち物もぜんぶ処分しちゃわないといけないでしょう。由美ちゃんの変身ぶりを見るのはあとの楽しみにとっておくわ。」 山村女史は、部屋の隅に置かれた由美のトランクを目配せしながら、サエに同意を求めた。 「それにしてもまぁ、ずいぶん大きなトランクなこと。いったいなにが入っているのかしら。」 山村女史は部屋の隅に置かれた由美のトランクに近づいていき、無造作にその蓋を開けた。トランクの中は由美のお気に入りの衣類で満たされていた。 「勉強道具はちょっとしかないのに、ずいぶん私服は持ってきたのね。」 「うちの高校が自由な校風だと編入前にずいぶん伝えましたから、きっと彼女それを本気にしたんでしょう。」 確かに前もって由美に聖愛女子学園の案内を送ったのはサエであった。しかしそれは由美を、自分たちの学園になんとかおびき寄せるためだったのである。さらにサエは付け加えた。 「それにそう思わせていた方が後で“制服”を着せた時との落差も大きいですがら、彼女に相当なショックを与えられますわ。それもあって自由な校風を強調しておいたのです。」 「あなたって本当によく残酷な方法を、いろいろ考えつく人ねぇ。」 山村女史は少しあきれた表情で、サエの顔を眺めた。 「あら、学園長もまんざらではなさそうですが…。それより彼女の私物チェックの方をお願いします。」 「そうだったわ。さすが東京の子ね。なかなかおしゃれさんみたいよ。」 山村女史はそう言いながら、トランクから由美の衣装を一枚一枚 吟味しながら取り出し始めた。 「この皮のジャケットなんて、彼女なかなかいいセンスよ。私がいただいちゃおうかな。」 「学園長ったらズルい。いつも一番いいのから先にいただいちゃうんですから… 。」 「でも由美ちゃんの衣装はサエさんの体にはちょっと小さすぎるかもよ。」 サエも笑いながら山村女史と一緒になって由美のトランクの中を物色し始めた。トランクの中の衣服は、由美が寮での普段着や外出用に持ってきたものだった。事前の案内で寮での服装は自由と聞いていたからである。しかし二人は由美のトランクの中の衣装をつまみ上げては無造作に床に放り出していく。いったい彼女たちは由美の衣類をどうするつもりなのだろう。 由美のお気に入りのキュロットスカート、プリントパンツ、若々しい雰囲気のカッターシャツやポロシャツ、トレーナーやセーター、すこしシックな雰囲気のブラウスなど由美が大切にしていたファッションアイテムがみるみる床にばらまかれていった。 「いかにもいま風の18才のお嬢さんね。ジャケットとブラウス以外は私には着れないわ。」 「このクリーム色のカッターシャツとセーターなら大きめだから私でも着れますわね。」サエも喜々として由美のセーターなどを目の前に広げ、じつに嬉しそうだ。 今の二人の女性教師の表情には、先ほどまで由美と両親に見せていた教育者の面影はみじんも無くなっていた。獲物をねらう、はげ鷹のような表情に変貌していた。 ひととおり由美の衣服を物色し終えると、今度はトランクの底部にしまわれていた由美の下着類を取り出し始めた。由美のお気に入りのショーツ、キャミソール、トップ類も無惨に床にまき散らかされていく。 「まぁ、ストッキングなんか全部新品よ。これも使えそうね。」 「新しい学園生活に備えてそろえたんでしょうね。可愛そうに …… 。あら、紺のラルフのハイソックスまでありますよ。」 「このキャミソールなんか可愛いわ。サエさんでも着れそうよ。」 二人の中年の女性教師が、若き18才の女子高生の衣服や下着を物色しあう姿は実に異様な姿であった。二人は由美の若さのエキスを吸い取ろうとでもするかのように、自分たちでも着れそうな由美の衣服や下着を選び出していく。 「由美ちゃんて、下着についてはずいぶん大人びた趣味のがお好きなようね。」 「持ってきた服が全部処分されたことを知ったら、あの子どんな顔するでしょうね。」 「かえって諦めがつくんじゃないかしら。やはり最初が肝心よ。」 「そうですね。可愛そうな気もするけど、由美のような気の強そうな子には最初に大きなショックを与えてしまった方が効果てきめんですしね。それに加奈子みたいに逃げだそうなんて気が起きなくなるでしょうし …… 。」 由美のトランクをすべて空にしたあとは、由美のハンドバッグの中身を調べ始めた。財布、手帳、携帯電話、化粧品など由美にとって大切な品々が机の上にならべられた。財布のみ金庫の中にしまい込むと、山村女史は平然とサエに命じた。 「由美が外部と絶対に連絡をとれないように手帳もぜんぶ処分しちゃってね。携帯電話は学園では禁止だからということにして、親元に送り返してしまいましょう。」 「化粧品はどうしましょう。」 「捨ててしまいなさい。どうせ今日からは由美にとっては必要のないものなんだから。」 「そうですね、由美がお化粧をする必要は当面ないわけですしね。でもあの子の年頃は一番お化粧したい時なのに… 、なんか哀れですね。」 「当面どころか、おそらく彼女はもう二度とお化粧を楽しめる年齢に戻れないかもよ。ふふふ…… 。」 再び山村女史は不気味な微笑みを浮かべながら床を見渡した。床には由美のお気に入りの衣服や下着が無惨にばらまかれたままだった。それらを横目で見やりながらサエがポツンと言った。 「かわいそうですよね。いちばんおしゃれを楽しみたい年頃なのに…… 。もう彼女がお化粧をしたり、おしゃれな服を着たり、大人の装いを楽しむこともできなくなるんですね。」 「そういうことね。もっとも後しばらくしたら、おしゃれな服を着たくても着れないような体になってしまうんだから、由美さん本人もいずれは泣く泣く諦めることでしょう。」 「ちょっと残酷ですね。何歳になっても二度とおとなに戻れない体にされてしまうなんて…。」 「でもそういう体になってしまえば、もうこの学園から逃げ出そうという気もおきなくなるでしょう。私たちにとっては安心よ。」 「ではなるべく近日中に、由美の体への処置も開始した方がよろしいのでしょうか。あの子、警戒心も強いようですから早いほうがよいかとは思っていたのですが……。」 「そうね、サエさんのおっしゃるとおりかもね。では由美の肉体処置の方は保健の相原先生とも相談しながら、近日中に始めて下さい。本人に気づかれないようにね。それと、とりあえず健康診断が終わったら例の制服も着せるわけだから、さっそく今日の午後から更正カリキュラムの方にも取りかかりましょう。」 「わかりました。でもなんか、胸がワクワクしてまいりますわ。どんな気持ちなんでしょうね。強制的に18才から引き離されるのって。」 「私も想像できないわ。いずれにしても18才の由美は今日でおしまいなのよ。」 「ということは、由美さんは一生うちの学園を卒業できない、ということかしら?。」 「そのとおりよ。あの子は幾つになっても聖愛女子学園の “児童”として、永久にこの学園の中で過ごすことになるの。」 「私が同じことされたら、気がくるってしまいますわ。フッフッフ …… 」 学園長室には二人の教官のとめどもない笑い声が、いつまでも続いていた。
《第二章に続く》
第二章からはいよいよ“更正カリキュラム”の名目で、18才の主人公 由美がさまざまな辱めや屈辱的な扱いを受けることになります。 読者の皆さまはどんな“辱め”を期待されますか。 もし期待される“辱め”や“屈辱的な扱い”がありましなら著者のFrilly Socks のメールアドレス fwkz1595@mb.infoweb.ne.jp までご希望をお寄せ下さい。可能な限り作品に反映させてまいりたいと思います。 |
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