泣きながら幼児化粧

「いい子だからもう泣かないでぇ。お顔が涙でクシャクシャになってしまうよぅ」
 女中がお湯を満たした洗面器を運んでくるのを見ながら、老人は頬をつたう涙をガーゼのハンカチでやさしく拭いてあげた。
 初枝は洗面器を縁側に置くと、大きな姿見を持ち出して美咲の正面に据えた。鏡の中に、ロンパースを着せられた可愛い女の子が写っている。ヒヨコの幼児服には、愛らしさを強調するようにレースのフリルがふんだんに使われているのだった。
「さぁ、お嬢様ぁ、お顔をフキフキしましょうねぇ。あんまりいつまでもお泣きになられますと、おメメが溶けてしまいましてよぅ」
 初枝がお湯に浸したタオルを固く絞ると、美咲の側にすわった。
「いやァン、自分でしますゥ」
「美咲は、もう赤ちゃんになってしまったんだから、自分ではなんにもしなくていいんだよぅ。着替えも、お顔拭きも、身の回りのことは、みんなしてもらえるんだからねぇ。ふッ、ふッ、ふぅ、もちろんオシモのお世話もだよぅ……」
「そんなこと、絶対に……ウグッ……」
 抗議の声を封じるように、蒸しタオルが顔をおおった。湯気の立つタオルで顔を拭かれること自体は、けっして不快なことではないのだが、それが老人の膝に抱かれたまま幼児のようにされるとあっては、たまらない屈辱である。しかし手足の自由を奪われたうえ、胡座の中に抱き取られていては、あらがう術がない。遠慮のない手は、首筋から胸の方にまで伸びてきて、何度もタオルを取り替えながら、執拗に拭き清めていく。ブラウスの胸元から、ホックを外されたままになっているブラジャーの端がのぞいていて、思春期の名残をとどめているように艶かしく見えた。
 意地悪なタオルからようやく解放された美咲の前で、初枝がトレンチケースを開いた。顔をそむけて新たな陵辱から逃れようとすると、髪をつかまれ無理矢理正面を向かされた。
 化粧水で肌を整えられ、淡い香りのクリームを塗られていく。老人の好みに合わせた幼さを強調するような薄化粧は、童女が床屋でしてもらうときのようなさりげないものである。初枝が美容師のような手つきで、形の良い唇に透明なリップ・クリームをひいた。
「いやぁ、怖いことはしないでぇ」
 ベビーオイルを染ませた綿棒が顔に伸びてきて、恐ろしいものに出会ったように顔をそむけた。淫らな保護者たちは、乳児の世話そのままに、鼻の中までも清めようとしているのであった。
「ほれ、ほれ、じっとしていないといけないよぅ。お鼻をキレイキレイするだけなんだから、ちっとも怖いことなんかないだろぅ」
「だってェ、いやぁ、いやぁ、あッ……クシュン!」
 綿棒で鼻の粘膜を刺激されているうちに、ムズムズする感覚をこらえきれなくなり、可愛いくしゃみをした。その直後、美咲の身体が小刻みに震えだした。
「うッ、ウぅぅぅ……」
 限界をはるかに超えて我慢を強いられた膀胱が、くしゃみのショックで収縮を始めたのである。オシッコの漏れ出る感覚に、あわててお尻の穴をすぼめ懸命にこらえようとするのだが、一度堰が切れるともう自分の意思ではどうすることもできなかった。オシメに包まれた股間から、くぐもった放尿音が伝わってきた。
 なんとかオシッコを止めようと括約筋に力を込めるたびに、大腿にビクンビクンと痙攣のはしるのが痛々しい。股間から大腿にかけて、熱いものがじくじくと広がっていく惨めさに、十四歳の少女は泣き出したくなった。
「さぁ、こんどは反対の方だよぅ」
 老人は、可愛い赤ん坊がお洩しを始めたことを知りながら、わざとその事実にはふれず、素知らぬ振りをしてお鼻のお掃除の介助を続けている。
 オシッコを押し止めることができないことを覚って、あきらめたのであろうか。遠慮がちに漏れ響いていた放尿音が、いつのまにかチィーッという少女特有のかん高い音に変わり始めた。老人の胡座の中で美咲は、固く目を閉じたまま、苦痛から解放されていく痺れるような快感に浸っていた。
「お鼻の次は、お耳もキレイキレイしようねぇ」
「……!……」
 声を掛けられても、今の美咲には応えることはおろか、身じろぎすることさえできなかった。泣き出したくなるような感覚が、股間からお尻にかけて拡がっていくのだ。粗相をして母に叱られたことや、笑いながら後始末をしてくれた父の思い出など、すっかり忘れていたはずの幼児の頃の記憶が、妙に生々しく甦ってきた。だが、此処には、やさしい両親がいないのだ。それに、お洩しを笑いながら許してもらえる年齢でもなかった。
(どうしよう、こんな失敗をしでかしてしまって……。もし、このことが老人に知れたら、もっともっと恥ずかしいことをされるに違いない。神様ァ、どうか気づかれませんようにィ……)
 しかし、願いとはうらはらに利尿剤によって造りだされた大量のオシッコは、なかなか終わらない。美咲は、老人の膝に抱かれたまま、シュルシュルといつまでも可愛い放尿を続けていた。
 ロンパースの上から下腹部に手のひらを添えて緊張の度合いを探っていると、はちきれんばかりに固くなっていた膀胱が急速に柔らかくなっていくのが、手に取るようにわかった。耐えに耐えた末の大量のオシッコは、熱い噴流となって股間に広がり、オシメをぐしょぐしょに濡らしてから、ようやく止まった。
 美咲は、ベビーオイルをしませた綿棒で耳の穴までも清められていくのを、濡れたオシメのままなすすべもなくじっと耐えていた。
「お願い、変な髪型にしないでェ……」
 初枝が、手入れの良いクセのない髪に櫛をいれ始めると、思わず抗議の言葉が口をついた。毎朝洗髪を欠かさない世代にとって、髪は大切なオシャレ・ポイントである。それなのに、きれいにカットした髪を真中から左右に分けて、小学生がするようなお下げ髪に変え始めたのである。
「ほれ、ほれ、じっとしていないといけないよう。お家に帰るときは、ちゃんと元に戻してあげるからねぇ。学校指定の髪型のままだと、赤ちゃんに似あわないだろぅ」
 老人が、手の平で美咲の頬を左右からはさむようにして、動くのを押さえつけた。
「あッ、嫌ぁ、髪を切らないでェ!」
 トレンチケースからハサミを取り出されるのを見て、美咲は思わず叫けんだ。初枝の手には、イヤイヤをして暴れる大きな赤ちゃんの安全に配慮して、先の丸くなった幼児用の散髪ハサミが握られている。
「動いたら、危ないよぅ。あんまり悪い子にすると、お仕置きだよぅ」
 赤ん坊を押える老人の手に、力が加わった。
「だって、あッ、あッ、やめてェ!」
 美咲の抗議をよそに、ハサミを握った女中は、前髪を刈り揃えていく。幼さを強調するように額にたらした前髪は、老人好みのヘアースタイルである。
「ほうら、もう御髪はもうおしまいだよぅ。もう少し伸びたら三ッ編みにしようねぇ」
 大きなビーズで作った髪飾りを左右のお下げに付けられ、十四歳の少女は、あどけない幼女のような髪型にされてしまった。
「酷い、ひどいわァ、無理矢理髪を切るなんてェ……」
「よし、よし、とっても可愛いよぅ。美咲ちゃんは、こうしてだんだん赤ちゃんになっていくんだよぅ。まだ、お昼まではだいぶ時間があるし、今日はどこまで赤ちゃんになれるかとっても楽しみだねぇ」
 老人が、赤ん坊をあやすように膝を上下させながら慰めた。正面に置かれた姿見の中に、幼児の衣装を着せられたお下げ髪の女の子が写っていた。紅い兵児帯を胸にかけられているため、ロンパースの上からかすかに膨らみを見せているのが愛らしい。
「いやァ、こんな恥ずかしいことは、もう嫌です。もどしてぇ、元に戻してェ」
 屈辱的な姿に、美咲は聞き分けのない幼児のようにかぶりを振ってさけんだ。身体を揺するたびに、レモン・イエローの髪飾りをつけたお下げが右に左に可愛く揺れた。
「おや、おや、急におむずかりをしてどうしたんだぇ、美咲ちゃん。さぁ、いい子にしようねぇ。おやつをあげようかなぁ。それとも、オモチャがいいかなぁ」
 老人が、整理カゴに入っていた、でんでん太鼓を取り上げた。
「旦那様ぁ、お嬢様が、おむずかりなされるのは、オシメが濡れたからではございませんでしょうか。さきほどお鼻をキレイキレイするときに、お洩らしなされたご様子で……」
 トレンチ・ケースをかたしながら主人に報告する声を聞いて、少女の肩がギクリと震えた。
(知っているんだわァ、この嫌らしい人たちは、失禁のことを……。夢なら、早く覚めてぇ……)
 美咲は、心の中で叫んだ。しかし、ロンパースの股間のホックを外す指の動きは、夢にしてはあまりにも生々しかった。遠慮のない手が、ロンパースの裾を胸の方にまでたくし上げ、青空にはえるヒマワリをイメージしたオシメカバーをむき出しにしていく。
(もうダメ、誰かァ、誰か助けてェ……)
 大きな手のひらがお尻をさすりながら、股間へと撫であがってきた。カバーの上からオシメの濡れ具合を探る、独特の手つきである。やがて、オシメカバーの一番下のホックが外され、嫌らしい指がもぐり込んできた。
「あぁ、あぁ……ダメじゃないかぁ、美咲ちゃん。オシメが濡れたら、ちゃんと教えなくちゃいけないよぅ。『お爺ちゃまァ、美咲は、お洩らししちゃいました』ってねぇ。ほんとに、うちの美咲は甘えん坊で手の掛かる赤ちゃんなんだからぁ。同じ年の子は、とっくにオシメが取れているというのに、オマルはおろか、いまだにオシッコさえ教えることができないんだからねぇ」
 しわがれた指がおへその下で可愛いリボン結びにされたオシメカバーの腰紐をゆっくりと左右に引いていく。
「やめてぇ、濡れてなんかいませんからぁ。お願い、このままにしてェ」
「いくら隠しても、お爺ちゃんには、すぐわかるんだよぅ。美咲ちゃんのオシメカバーからオシッコの臭いがするものねぇ。濡れたままのオシメをいつまでも当てていると、オシメかぶれになってしまうよぅ。さぁ、オシメを替えてあげようねぇ。お洩らしでグチョグチョに濡れてしまったから、気持ちが悪いだろぅ」
 コポコポと、ゴム引きのオシメカバー特有の恥ずかしい音を立てながら、ゆっくりと前当てが外されていく。
「嫌ッ、触らないでェ。このままで結構です。取り替えてなんか欲しくありません」
 中学三年生の少女は、肩を揺すって拒絶の意を表した。失禁してしまった股間は、老人の指摘どおり耐えがたいほどに気持ちが悪いのだが、秘密の部分をのぞかれる羞恥の方がはるかに強い。
「おや、おや、いつまでも濡れたオシメのままでいたら、そのうち段々冷たくなってきて風邪をひくだろう。さぁ、わがままを言わないでオシメを交換しようねぇ」
 花びらをめくるようにカバーの前当てを広げると、甘臭いオシッコの香りがあたりに漂いはじめた。飴色をした内張りのゴムが、妖しく濡れ光っている。
 女の子を膝に抱いたままお洩らしさせると、お尻にあたる方を中心に濡らすものだが、限界を超えて我慢させられた大量のオシッコのため、男の子のように前の方にまで大きなシミをこさえていた。そのことが幼女趣味の老人には、元気な赤ちゃんに恵まれたようにように思えて、妙にうれしくなるのだった。
 しかし、ピンクの麻の葉模様にできたシミまでが、老人を喜ばせる玩具と化していることなど、清純な少女には思いもよらないことである。なにも悪いことをしていないのにどうして、こんな恥ずかしい目にあわされるのか、美咲にはどうしても理解ができなかった。一刻も早く陵辱から解放されたくて、淫らな老人にただ許しをこうばかりである。
「嫌ぁ、ゆるしてェ、いやぁぁ……ひッ、ひッ、エーン」
 ぐっしょり濡れたオシメから、かすかに湯気がたちのぼっていた。不条理な行為を強いられての結果とはいえ、幼い頃から絶対にしてはいけないと躾られてきた失敗を演じてしまったのである。オシッコ臭いという老人の言葉は、否定のしようもない。あまりの恥ずかしさに、十四歳の少女は、こらえきれなくなったように涙をあふれさせ始めた。
「よし、よし、泣かなくていいんだよう。そんなにオシメ交換が嫌だったら、無理にしやしないからねぇ。さぁ、もう一度オシメをナイナイしてあげるから、泣くのは、おやめぇ」
 中学三年生といえども、顔をクシャクシャにしながら泣きじゃくる姿は、幼児のようにいたいけに見えた。赤ちゃんごっこに夢中の老人は、初孫が予想以上に早く幼児的な反応をしめしたことにニンマリとしながら、オシッコの滴がつたうゴム引きのオシメカバーを閉じ、プチ、プチとホックをかけていった。胡座縛りにしてある脚を持ち上げて、浮かせたお尻の下にロンパースの裾を引き込む手際のよさは、少女の育児に慣れていることを如実に現していた。紅い兵児帯で胡座縛りにされている事実と美咲の年齢を別にすれば、可愛い孫をお守りするのどかな一コマであった。
 祖父の膝の上で、黄色いロンパースを着せ直された少女が、涙を拭いてもらいながらあやされていた。老人が耳元でなにかを囁くたびに、駄々をこねるようにイヤイヤをくり返していたが、頭を撫でられているうちに可愛い抗いが徐々にやわらいでいった。
 淫らな保護者が簡単に我侭を許すとき、そこに新たな罠が隠されていることに美咲は、まだ気が付いていなかった。

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