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天文のお部屋

Gilthoniel A Elbereth ! Aiya Elenion Ancalima ! - うつくしい天文紹介のページ

お金とお暇があったらこのページが増築されるでしょう。

2015年の天文現象

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時間が書かれているものについては地方によって時間が多少ずれるものがあるので注意してください。

機材たち

自分の持っている、あるいは持っていた機材を雑然と並べてみる。気が向いたら写真も付けるかもしれない。

過去のもの

7~21×50のポロプリズム型双眼鏡(メーカー不明だがアトラス光学(現ビクセン)のFokusである可能が高い。)

小学校5年のときに親に買ってもらった最初の天文機材。緑の箱に値札が付いていて1万円ちょうどくらいだったと思う。7倍は普通に使えたけど、倍率を上げると使い物にならなかったのは言うまでもない。ズーム機構が壊れ気味で使わなくなった。物置に眠っているかもしれない。ネットオークションに出ているアトラス光学(現ビクセン)のFokus双眼鏡の画像を見ると接眼レンズ周りの質感とかズーム倍率の数字のフォントとか目幅の目盛りのマークが記憶と合うので、多分これだと思われる。画像の本体スペック表記によると実視界が4.5~2.5度となっているので実用性のある7倍では見かけ視界31.5度という狭視界双眼鏡になってしまうわけで、単なる7×50と比較するとやはり使うのに難があると言わざるを得ない。

ネットオークションの商品紹介画像をちょっと引用

全体
スペック表記
ズームの倍率表示(7, 12, 17, 21)の記憶がある
目幅調整のところのイチョウの葉のような意匠にも記憶がある

カートン光学6cmF15アクロマート屈折望遠鏡60KT + スーパーノバ赤道儀アルミ三脚付き

 1987年(すなわちハレー彗星ブーム終了後になる)に親に買ってもらった本格的天文機材(モータードライブなんかは高かったので付けていない)。付属品のアイピースはツァイスサイズのEr20mmとOr9mmだったと思う。赤道儀はサビが出ちゃってたし、カートン光学が望遠鏡事業から撤退して拡張性もなくなっちゃったので廃棄処分に。鏡筒はまだ物置にあるかも。せっかくのOrが過剰倍率気味になって使いどころが難しかったりと問題はいろいろあったが、見え味はそれなりだった。

昔の写真のスキャンから切り出してみた。鏡筒バンドいじっている自分の手だけは消せないが。

Minette MH-80B三脚

 アルティマの固定用に買った三脚。販売元のみなと商会は倒産しちゃっている。他にCanon EOS 40Dの脚としても使ってます。

MH-80B三脚
アルティマ EDを載せた全体像

双眼鏡

ビクセン アルティマ ED 8×44

 保証書記載の購入年月から考えるとこれは初ボーナスで買ったものと思われる。当時のビクセンの双眼鏡ラインナップでは最高級グレードだったはず。ちょうど多少光害があっても使えるひとみ径が5mmくらいの双眼鏡の方がいいんじゃない?的な記事がスカイウォッチャー(星ナビの前身みたいな雑誌)かなんかの天文雑誌に載っていたので、それに従ってそれまでの定番の7x50でなく8x44を選んだような気もする。

 EDレンズを採用したポロプリズム型という極めてレアなタイプの双眼鏡。視界がやや狭いものの(見かけ視界52度)シャープで他の双眼鏡よりもクリアに見える。クリアに見えるのはEDレンズのおかげだけじゃなく、接眼レンズの枚数が少ないのもあるのか?(ベースになっているアルティマはカットモデルを見る限りケルナー型。参考リンク。)コストパフォーマンスが優秀だと思う(でもアルティマ EDは廃盤です)。それからポロ型にしては軽量。おそらくプリズムを小型にして軽量化したと思われるので、そうすると周辺視野の光量が減るデメリットがあると思われる(特に気になったことはないが)。あとポロ型の弱点なのだろうが、筒内の迷光防止処理は結構しっかりされているにもかかわらず、逆光でフレアが発生しやすいのも欠点(天文用途で気になるのは月やその近くを見るときくらいだが)。あと非防水なので使った後は虫干し必須。最近表面のシボ革(多分ポリウレタンの合成皮革)がボロボロにはがれてしまったのでビクセンにオーバーホールを依頼して見事復活。大変ありがたいことです。

 下陣笠の近くにJ-B 56の刻印がある。これは昔輸出用の双眼鏡に付けられていた製造メーカーを表す記号らしい。56番は日吉光学の番号なのでそこのOEMだということが分かる。

アルティマ ED 8×44
ケースも何か高級感があり
三脚にセットするとこんな感じ
オーバーホール前の状態
オーバーホール後の状態

ミザール BKW-6532 6.5×32

 広い実視界の双眼鏡がないかなあ、と思って手に入れたのがこれ。カタログスペックでは実視界が10度、実測してみると9.5度くらい。おそらく中国の双眼鏡大手OEMメーカー昆明United OpticsのBW18型というやつ。

他の購入候補として挙がっていたのは、まずニコンのEII(実視界8.8度)で見え方は文句なしだけども、メガネ使用ではアイレリーフが微妙に足りない。Sightmark 7x36 Solitude XDあるいはZen Ray 7x36 ED2って舶来モノのダハ型(実視界9.0度)もあるけど、現物をチェックしないで(特に周辺像は気になる)輸入するにはなかなか敷居が高いお値段。ニコンのAction Ex 7x35は実視界9.3度で価格的にも近いところだったが、比較してみるとAction Exはコーティングの反射光からしてフルマルチコートではなさそうだったのと、周辺像の崩れ方が気に入らなかったので、結局こちらを入手。

こちらは対物レンズ、接眼レンズ、プリズムいずれもすべて緑色の反射光でフルマルチコート。倍率が低目なこともあるのか、視野の中心から7割くらいまでは収差は目立たないので合格点。欠点としては、実視界が大きいためプリズムの屈折率がBaK4でも足りないらしく最周辺は青っぽくなる。広視界にしている割りに筒内の迷光除去処理が価格相応のレベルなのでゴーストが出やすい。アイレリーフが長くて見掛け視界が広いのでアイポイントがシビア。ソフトケースが小さくて収納しにくい。防水のセンターフォーカスポロ型ということもあって小型機なのに重い(カタログで690g)、と結構列挙できてしまうのだけれども、実売15k円だし、これだけの広い実視界はなかなか得がたいものがあるので、まあいいのではなかろうか。

ビクセン アペックスプロ HR8×32SP

 ダハプリズムの位相ずれの問題に興味を持って、一個くらいはダハプリズムの双眼鏡が実験用にあってもいいかなあ、とか思って買ったのがこれ。ただの実験用というには随分と実用志向な選択である。かつてのビクセンのダハ型の最上位機種だし…(今はアルテスになったが)。品番にSPがついているのは補助プリズム(ハーフペンタプリズム)の全反射しない面のコーティングを誘電体多層膜コートに替えた限定再販品。最初は協栄産業との企画モノだったような気がするけど、普通に家電量販店にも出回っている(在庫限りの限定品なのは変わらないが)。

他の同価格帯類似スペックとして挙がるのは、ニコンのモナーク7 8x30、コーワのBD32-8XD、フジノンのKF8x32H(ケンコーの8x32 DH MSやSightronのSIII MS 832もおそらく筐体デザイン違いの同等品)、リコーペンタックス 8×32 DCF SP(ラインナップ刷新のため、この機種はすでにディスコン)、舶来ブランドだとCelestron TrailSeeker 8x32、Vanguard Endeavor ED II 8320。バードウォッチングの第一選択肢がこの辺りのスペックなので結構豊富。スペックの違いとしてはモナーク7とコーワBD、Vanguardは中国製でEDレンズ使用。Celestron、ペンタックスは中国製でEDレンズ不使用。アペックスプロとフジノンKFはEDレンズ不使用で日本製。モナーク7は口径がちょっと小さく、さらにボディがポリカーボネートベースのFRPという話で他のより軽い。それから実視界が他のより広い。コーワBDとフジノンKFはボディはマグネシウムダイカストなので重量は近いが、コーワBDの方が一回り小さい。コーワBDはレンズに汚れ防止コーティング(KRコーティング)がされている。あとフジノンKFは全反射しない面のコーティングが銀コートなので他のものより反射率がちょっと落ちるかも(これは他の誘電体膜コートの質次第だが)。アペックスプロはアルミニウムダイカストなので、この中では一番重い(その代わり耐久性は一番ありそうな感じ)。ペンタックスは非球面レンズ採用(ハイブリッドと書かれているのでガラス球面レンズの上に樹脂で非球面を構築したタイプと思われる)、汚れ防止コーティングあり、マグネシウムボディのはずだけどレンズ枚数が多い(対物が3群4枚、接眼が3群5枚)からか、アペックスプロと同じくらいに重い。

とりあえず展示品があるものを見ることにして比較(ペンタックスとVanguardはなかった)。鏡筒内部の迷光防止だが、見た感じではフジノンが一番しっかり溝を切って、艶消し処理をしているように見える(まあ溝の数が多ければよいというものでもないのだが)。アペックスプロは溝の数はフジノンと同程度にしっかり入っているが、縁がギザついていて少し反射がありそうなのが気になる。中国製のモナークやコーワは溝の数がやや少なめ。ただ接眼レンズ側から射出瞳の周りの暗さをチェックしてみるとフジノンは比較的大きい明るいゴーストが出ているのが気になる(どこから出ているのやら?)。他の機種は射出瞳の周りについてはそんなに変わらない感じ。逆光の中で小さい文字を見てみるとコントラスト的にはアペックスプロが他よりちょっとよさそう。

白色LEDを見て少しピンボケさせてみると、EDレンズを使っているニコンとコーワは色収差は少ない。どちらかといえばコーワの方が少ないか。ちなみにセレストロンはちょっと色収差が多めに見えた。

性能的に見ると、お値段的にちょっと高いけど、全般的にスペックが高いコーワ、少しコントラストが良くて安いけど重いアペックスプロ、視界がちょっと広くて軽いが、口径がちょっと小さいモナークといった感じになるが、結局アペックスプロにしてみた。多少重いとはいえポロ型に比べてコンパクトなのは持ち歩きには便利。液晶ディスプレイの発する偏光を、円偏光フィルターを接眼レンズのところに置いて見てみるといろいろ不思議な挙動をする。

鏡筒

高橋製作所 FS-78鏡筒

 GP-D赤道儀を先に買ってあったので、後から追加した鏡筒。FCがシュタインハイル型(柔らかいフローライトの凸レンズを対物レンズの後側にして保護する)に対して、FSはフラウンホーファー型(フローライト凸レンズを前面に出す代わりに高強度のコーティングで保護する)。フラウンホーファー型の方が貼りあわせ面の曲率半径を大きくできるので、レンズを薄くできてコストダウンできるとか。ちょうどFS-78C(レンズセルを簡略化したバージョン、2000年7月発売だそう)に切り替わりだしたときに、スターベース東京でどちらにしますか?と言われて旧タイプの方でと言って買った。シリアルNo.01047、ということはFS-78は1000台以上売れたのかな、と思ったらFS-60CのCB化鏡筒パーツキットの説明によれば上2ケタは製造年表記とのこと。つまり2001年の47台目の製造ということか。取扱説明書を見ると本来付属しているのは6x30ファインダーのようだが、これは7x50になっている。買ったときに換装してもらったような気もするが、どうせなら正立ファインダーにしておけばよかったかも、とか今更ながら思っていたり。この後のラインナップではエコガラス対応のためか、二枚玉のフローライトアポクロマートはほとんど無くなってしまった。最近またデジタルカメラ対応と謳った二枚玉のフローライトアポクロマートが復活しているけど。GP-Dとの組み合わせはちゃっちゃと組み立てられるのでお気軽観望に便利。

FS-78鏡筒
FS-78をGP-Dに載せた全体像

Intes-Micro(笠井トレーディング扱い) ALTER-7 18cm F10

 大口径の望遠鏡でGP-Dに載ってメンテナンスフリーなものが欲しいということで2006年の年頭に買ったロシア製のマクストフ・カセグレン式の望遠鏡。惑星観望や球状星団観望なんかに非常に威力を発揮する。GP-Dに載るとはいえ、搭載重量的にはギリギリ。3.7kgのウェイト2つでバランスするが、赤経方向の微動とか結構苦しそうだったりする。天頂ミラーを付けないとピントが出なかったので、直視用に80mm 2インチスリーブ延長筒を追加購入。2015年になって販売価格が大幅にアップして、こんな高級品だったっけ?的な雰囲気に。2018年にとうとうディスコン。

ALTER-7鏡筒(フード装着の状態)
ALTER-7をGP-Dに載せた全体像

足回り

ビクセン GP-D赤道儀+アルミ三脚HAL-110

 先に赤道儀と三脚だけバイト代で買った(一応、星野写真に使おうとか考えて)。モータードライブ内蔵でボタンで操作できるし、(上のスーパーノバ赤道儀に比べれば)非常に使いやすいと思った一品。今となっては自動導入なんかがデフォルトに近くなっているので、便利さは落ちるだろうけど。後述のALTER-7を購入した際にバランスウェイトが足りずに新しいのを買ったら、GP-D2カラーの白いウェイトになってしまった。こちらも2014年末に生産中止。

GP-D赤道儀
三脚HAL-110

ポータブル電源 SG-1100

 GP-Dの電源として購入したポータブルバッテリー。協栄産業で買ったのでライトが目にやさしい赤色仕様(もっともかなり明るいので本当に目にやさしいかは疑問)。現在二代目。ALTER-7の筒内気流安定化のための換気ファンの運転にも使う。大自工業の製品なのだが、そのサイトの製品紹介には記述がない謎の品。中の鉛蓄電池が寿命になったので、秋月電子で買って来たものに交換して、結果として少し容量が増えている。ちなみに横浜市は鉛蓄電池の回収は原則販売店で、ということになっているので寿命になったものの処分には注意が必要(協栄産業も秋月電子も回収はしていないので回収してくれるところに持ち込む必要がある)。

SG-1100

眼視用アクセサリー

ビクセン LVシリーズアイピース

 FS-78鏡筒と一緒に入手した(ただしスターベースではなくヨドバシカメラで買った)ビクセンが出していた高級仕様アイピースシリーズ。25mm、15mm、9mm、6mm、4mmを購入(6mmは後から購入だが。焦点距離が5/3倍ずつになるようにしてある。√2倍系列にするなら15mmをはずして12mm, 18mmだけれども、現行製品のNLVには18mmがないんだな)。アイレリーフが20mmに統一されている。ロングアイレリーフのアイピースのはしりだったと思う。利き目に乱視が入っている自分には重宝する。あと天文素人の方々に覗かせる際にも見やすいので良い。見え味は高倍率のものは像が眠い印象。構成枚数が多いからか?ちなみにGP-Dに付録としてついて来た天体望遠鏡ガイドブック・観測編の中には3群5枚(2枚-1枚-2枚)の対称型+1群2枚のスマイスレンズを組み合わせた4群7枚の表記がある(なぜか目側にスマイスレンズが置かれているという間違いがあるが)。25mmはスマイスレンズが入っていないようだ。

LVアイピースシリーズ

ビクセン 31.7mm天頂プリズム

 普通の天頂プリズム。高橋の天頂プリズムが高価だったので、ビクセンのを購入した。タカハシの鏡筒のリング締め付けでスリーブを固定する形式とは相性が悪く、スリーブの脱落防止溝のせいでうまく締め付けられず、落下はしないもののクルクル回転してしまう。脱落防止溝のない天頂プリズムに替えるのも考え中。

Meade アイピースフィルター ND96

 いわゆるムーングラスというやつ。低倍率で月を見ると眩しすぎるのでこれを使う。NDフィルターなので余計な色が付かない(カートンの望遠鏡のときに一緒に買ったムーングラスは緑色だった)。

IDAS LPS-V3 31.7mm

 いわゆる光害カットフィルターというやつで、散光星雲の出している水素原子の輝線や惑星状星雲の出している酸素原子の輝線の波長の部分だけを通すフィルター。結果、それらが見やすくなる。といっても光害地で見える星雲っていうとM42くらいしかないので、使いどころは限られますな(効果は確かにあるんだけれども)。

Meade ND96(左)とLPS-V3(右)

ビクセン アイピースLV-W 22mm, 13mm

 主に散開星団の観望用に購入した広視界アイピース。見かけ視界が65度なのでLVシリーズより30%増し。見え味もLV-25よりスッキリしている印象。手元の天体望遠鏡ガイドブック・観測編にはLV-W自体の記載がないが、もうちょっと新しい版(ビクセンの旧製品取扱説明書のダウンロードページにある)の中には4群6枚(2枚-1枚-1枚-2枚)の対称型+1群2枚のスマイスレンズを組み合わせた5群8枚の表記がある(目側にスマイスレンズが置かれているという間違いはLVともどもそのまま)。レンズ枚数はLV-25より増えているのにスッキリ見えるのは謎。

笠井トレーディング EW-40

 ALTER-7には2インチアイピースが付けられるので買った焦点距離40mm、見かけ視界70度のアイピース。LVW-22だと実視界が48'しかならないので天体導入が面倒くさいというのもある。このアイピースだと84'になる。一方、瞳径は4.0mmになり、副鏡の主鏡に対する直径が31%だそうなので、副鏡の影は1.24mmあることになる。結構ギリギリのラインかも。4群7枚構成とのこと。カタログ落ち。

ビクセンLVW-22(左)と笠井EW-40(右)

笠井トレーディング 2インチDX天頂ミラー99%

 ALTER-7で2インチアイピース用に買った天頂ミラー(2インチだと天頂プリズムは高価)。誘電体コートで反射率が高いそうだ。31.7mmへの変換アダプター付き。

ビクセン31.7mm天頂プリズム(左)と笠井2インチ天頂ミラー(右)

笠井トレーディング HC-Orシリーズ

 LVの高倍率の像が眠いので、それを改善すべく買ったアッベ式Orのアイピース。18mm、12mm、9mm、6mmを購入(こちらは焦点距離が√2倍ずつになるように買っている。出所が大井光機ならば12mmは実際には12.5mm?)。Orなので短焦点ではアイレリーフが短くて眼鏡使用不可だけど、ひとみ径が小さければ乱視は影響しにくいだろうという考えで買ってみた。自分の乱視の強さ(確か1.5D)では特段問題はないようだ。

HC-Orシリーズ

ビクセン NPL-25mm、8mm

 きまぐれで買ってみたビクセンの普及品のプルーセル(Plössl:オーストリア人の名前なのでドイツ語として普通に転記したらプレスルのはずだけど、なぜか色んな表記が飛び交っている形式である)アイピース。焦点距離的にはHC-Orのシリーズの√2倍列の延長に当たるわけだけれども、グレード的には系列上には乗らんだろうなぁ。廉価品なので太陽観測とか熱劣化しちゃってもいい用途に使うつもり。で、金環日食と金星日面通過の投影用に8 mmも追加購入(FS-78で実視界38'になるので、ほぼ太陽面がぴったり投影できる倍率になる)。NLVとLVはカタログスペックを見る限り設計が同一みたいだけど、PLとNPLは設計が変わっているようだ。

Televue プルーセル 25mm,40mm

 Televueのプルーセルアイピース。HC-Orのシリーズの√2倍系列の延長として購入。一般に出回っている中国品のプルーセルと比較するとビックリするようなお値段だが、いろいろと丁寧に作られている感はある。なかなか出番がないが。40mmは31.7mmサイズの制約により視野が狭め。なおテレビューから1983年にプルーセルの設計についての特許(US 4482217)が出ているので、これに沿った設計なのかな?ちなみに記載の硝材を屈折率とアッベ数からオハラのチャートで引いてみると凹レンズがS-TIM39、凸レンズがS-BSM25というものに対応するようだ(といっても自分には何だかさっぱり分からん)。

ペンタックス XWシリーズ

 ペンタックスの定評ある広視界アイピース(特にコーティングや迷光除去が卓越していると言われる)。アイレリーフ20mm、見かけ視界70度で統一されている。ペンタックスは望遠鏡関連製品をいつまで生産してくれるのだろうと言われていたが、とうとうペンタックス(HOYA)がフィールドスコープに使えない2インチのXW30とXW40を生産中止にしちゃうー(ペンタックスのフィールドスコープのアイピースは他のメーカーのような独自規格じゃなく、望遠鏡の31.7mmアイピースの規格をそのまま採用している)、ということで協栄産業に残っていた在庫を購入。そのうちになぜかXW20、XW14、XW10も増えた。で、ペンタックス(今度はリコー)がフィールドスコープに使うには高倍率すぎて使い勝手が悪そうなXW5とXW3.5をカタログ落ちにしたので、XW5を購入(XW3.5はさすがに広視界の意味がなさそうなのでいいや)。リコーに移って箱が銀色に変わっていた。

Televue パワーメイト x2.5

 対物レンズの焦点距離を凹レンズを使って引き伸ばすバローレンズの高級版(レンズ使用枚数が多い)みたいなもの。すでにアイピースに似たような働きのスマイスレンズが組み込まれているLV、LVW、XWといったシリーズとは相性が悪いはずなので、笠井のHC-Orと組み合わせて使う。

写真アクセサリー

結構あるけど、ちゃんと使い込んでないものが多いのでとりあえず列挙。

  • ビクセン 暗視野ガイドアダプターGA-4: 天体写真撮影時に手動ガイドするために使うパーツ。オートガイダー全盛の現在、今後役に立つことがあるとはあまり思えなかったり。
  • タカハシの写真撮影用各種アダプター: FS-78にカメラを接続するためのパーツ群。一度つけると外すのが結構大変なカメラ回転装置、アイピースを入れて拡大撮影するためのTCA-4、カメラマウントの径に縮小するCA35接続環、カメラに接続するためのカメラマウントと接続環がたくさん。ちなみにカメラを直接望遠鏡に付ける(直焦点)するには手元にないドローチューブ延長筒がさらに必要。とりあえずGP-Dでは焦点距離630mmは厳しそうなので今のところ直焦点は考慮していない。
  • FS-78レデューサー: FS-78の焦点距離をF6.1相当の474mmに短縮する。一般的にレデューサーはF値を小さくして露出時間を短縮すると同時に、写野の周辺部の画質を向上される効果を持たせている。レデューサーは概して高価なパーツである上に、機種ごとの専用設計になっているのが基本。他の機種を似たスペックの機種のレデューサーを流用しても良い画質が得られるかは、まさに「相性」の問題といわれる。FS-78の純正レデューサーはとっくの昔にディスコンになってしまっていて、FC-65と共用にされたり、最近ではFC-76Dと共用になったりしているのだが、ある日ちょっとCATを見たら程度のよさそうな中古のFS-78レデューサーが売られていたので、早速購入。月でテストしてみた感じではよさげ。
  • Canon EOS 50D: 手持ちの40Dよりもライブビューが扱いやすくなっている(天体写真の場合、ピント合わせでライブビューが重宝する)という50Dを秋葉原の中古屋で調達してきて、キヤノンにオーバーホールに出した後、誠報社(現スターショップ)でセンサー前面のIRフィルター除去して天文専用に換装。これでHα線も良く写るようになった。
  • 単焦点レンズ4本。天体写真撮影ではレンズを天頂向けたまま長時間撮影したりするので、その時にレンズの自重で焦点距離がズレてしまう可能性があるズームレンズは不向き(単焦点と比較するとF値が暗い=撮影時間が長くなって難易度が上昇というのもあるが)。なので、単焦点レンズを揃えている。あんまり高価なレンズには手が出ないが、手が出る範囲でメーカーのMTF曲線やphotozone.deとかの評価でなるべく周辺の解像度が高いものを選んでいる。現状の手持ちは24mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO、Canon EF50mm F1.4 USM、Tamron SP 90mm F/2.8 Di MACRO、Canon EF200mm F2.8L II USM。
  • Celestron NexGuide: オートガイド用のCMOSセンサーとかの詰め合わせセット。ただいまテスト中。

書籍関係

     
  • 全天 星雲星団ガイドブック : 有名な藤井旭先生による本。小望遠鏡の対象になる星雲星団を取り上げている。1978年出版なので今となっては内容が古い(コダック103aEを使った撮影とかが載っている)。この本を最初に読んだのは小学生のときに図書館で。
  • 朝日コスモス別冊 スカイ・ウォッチング : 同じく藤井旭先生による本。カートンの望遠鏡の付録。初心者向けの双眼鏡や望遠鏡による観望が一通り網羅されている(やっぱり103aEを使った撮影が載っている)。
  • 星座早見板 : 3個ある。1個はカートンの望遠鏡の付録。1個はGP-Dの付録。1個は天文ガイド版。あと同じような役目をするものにASTRODEA(腕時計)やコスモサイン(壁掛け時計)がある。
  • 天文年鑑 : 毎年買っている。天文現象の時間や位置のデータ集。観測予定を立てるのに必須。
  • SkyAtlas 2000.0 Second Edition Desk version, W. Tirion and R. W. Sinnott : 8.5等星まで載っている星図。ラミネート加工されているので夜露にも安心。ちなみにこれを使う前は「切りとる本 天体観測星図集」っていうのを使っていた。
  • 星雲・星団ガイドマップ : 有名どころの星雲・星団の付近の詳細星図が載っている(12.5等星まで)。目に見えない散光星雲の写真の構図を決めるのに使える(と思うけど、やったことがない)。
  • 双眼鏡・小型天体望遠鏡で楽しむ星空散歩ガイドマップ : タイトルの割にはSkyAltasより詳しい。カラーになっている。SkyAtlasより分割が細かい(一枚の範囲が狭い)ので目当てのページを探すのが若干面倒。夜露でちょっとぺにゃぺにゃになっている。
  • 図説 月面ガイド : 月齢ごとの撮影例、月面上の見どころ、月面撮影の方法(1987年発行なので当然非デジタル)が載っている。月面観望に有用な本。

欲しい気がするもの

  • フジノン FMT-SX 10x50 : ニコンSPとならんで天文用ポロプリズム型双眼鏡の最高峰と呼ばれる。ニコンSPが標準視野なのに対して、フジノンの10x50は広視界化されている。それでいてフラットナー使用のため、視野周辺でも星像がよいとか。ラバーコートされているFMTRもあるので、ぢちらがいいやら。手持ちで扱うには結構ギリギリの10倍で、そこそこの重量があるので三脚も買わなきゃいけないかも。
  • 国際光機 正立ファインダー EF-508 : 正立ファインダーの像は、空と星の配列が同じ向きになるので、星図と空とファインダーの視野3つを照らし合わせて天体を導入するときに楽ができる。ただFS-78もALTER-7もファインダー脚がビクセン規格じゃないのでその辺も含めて換装する必要がでてくると結構面倒かも。
  • ペンタックス XW-7:ラインナップ上で持っていないやつ。ただ必要性は微妙か。
  • Canon EF100mm F2:Tamron 90mm F2.8がマクロレンズなので無限遠での描写が多少甘いかもということで導入候補。もう少し検証が必要。

猫的双眼鏡の吟味

天文用途の双眼鏡の口径とかひとみ径(明るさ)とか倍率の話は他のサイトでもいろいろ書かれているでしょうから、ちょっと毛色の違う方向で。

一番重要な光学的性能はスペック表には書いてない

双眼鏡は光学機器なので光学的性能が最重要なのは当然のことなのだけれども、その詳細はカタログのスペック表なんかにはまず書いてないわけだ(カメラレンズのMTFみたいな評価がされてもいいような気はするが。カメラレンズと違って射出する光が焦点を結ぶわけじゃないからそのままというわけにはいかないだろうけど)。ならば、実際に覗いて評価しなきゃいけないわけだが、じゃあ評価の対象とするべき光学的性能っていうのはどういうものか、双眼鏡を売っている家電量販店なんかの店内でどう評価したらいいか、なんてことを参考程度にメモ書き。ちなみに恒星という点光源を観察するという天文用途はまさに光学性能試験そのものみたいなものなので、実際に買う前に恒星を見てみることができれば、それが最善の評価法なのは言うまでもない。光学的性能についてはAllbinosとかの海外の双眼鏡評価サイトを参考にしてみたり。

球面収差

光の波長(つまり色)に依存しない収差(像のボケやゆがみ)はザイデルの五収差と呼ばれる5種類があるわけだが、その中で視野の中心でも発生するのがこの収差。これがちゃんと補正されていないということは(視野の周辺では他の4つの収差がさらに上乗せされるので)視野のどこでも像がボケてしまうということで、そもそも設計や部品の組み立てに問題があるということになる。

評価方法は遠くにある小さい文字を視野の中心においてどのくらいまで読めるかを見てみれば分かる。要は視力検査みたいなもの。あと球面収差が大きい場合、正確にピントが合う位置がないということなので、ピントの最良の位置(いわゆるピントの山)がしっかり分かるかどうかというのも球面収差の評価のポイントになる。

レンズの光学的な分解能は口径3cmなら4.3秒角、4cmなら3.2秒角、5cmなら2.6秒角で、肉眼の分解能は視力1.0の普通の人では1分角=60秒角なので、レンズが3cmでも14倍以下の倍率なら、肉眼の方が分解能の制約になる。すると倍率6倍なら10秒角、倍率8倍なら7.5秒角、倍率10倍なら6秒角の分解能ということになる。PC-9801では日本語ビットマップフォントが16×16ドットでできていて個々の漢字が識別できていたということを考えると、ざっくりした計算になるが分解能の16倍の大きさ、つまり倍率6倍なら160秒角、倍率8倍なら120秒角、倍率10倍なら96秒角の漢字なら識別できるだろうと思われる。となると1cm角(約28ポイント)の漢字が倍率6倍なら12.9m、倍率8倍なら17.2m、倍率10倍なら21.5m離れたところから読めれば、実用上問題がないところまで球面収差が補正されている、と言えそう。この理屈だと倍率1倍、視力1.0の肉眼では1cm角の漢字は2.15m離れたところから読めるということになるが、実際に見てみるともうちょっと遠くからでも読めそうな感じで、この計算は甘く見積もっているかも。

ちなみに後述する色収差を補正するために対物レンズにEDレンズを使うと、EDレンズの屈折率は普通の光学ガラスより小さいので、普通の光学ガラスと同じ焦点距離にする(=同じ筒の長さにする)にはその分曲率を大きくしないといけなくなる。その結果、(対物レンズの)球面収差は大きくなってしまう。これを接眼レンズとの組み合わせでうまく補正できているかは確認すべきポイント。

他の収差

ザイデルの五収差の残り4種類は視野の周辺で現れる収差で、コマ収差、非点収差、歪曲収差、像面湾曲の4種類。

コマ収差は視野の中心からの距離に比例するという性質上(=半径50%あたりと半径80%あたりでの収差の大きさがあまり違わない)、これが目立つようだと広範囲で像が劣化することになるので優先して補正されているはず。アクロマートといったら球面収差とコマ収差、それから後で述べる軸上色収差の3つが補正されていることを指すくらいなので、この3収差が優先して補正されるべきというコンセンサスがあるのだろう。残りの3つの収差はある程度の補正がされていれば最外周部でのみ目立つ形になるので、メーカーの志向やユーザーの好みによってどれを重視するかが変わってくる。

まず総合的な評価としては、球面収差を評価するときと同じように遠くの小さい文字が読めるかで見るのがよさそう。中心で読めていた文字を視野の周辺に向かって動かしていくと読めなくなるところがあるので、そこまでを良像範囲として評価する。スペックが広視界の双眼鏡の場合、実際の良像範囲は普通の双眼鏡と大して変わらないということがあり、その場合、とりあえず視野への対象の導入を容易にするためにピンボケでも見えていればその広視野に価値があると判断するか、質の良い像でなければ意味がないと判断するかで評価が全然違ってくる。で、そこでピント位置をずらしたら再び文字が読めるようになる場合、周辺の収差は主に像面湾曲で、それ以外の収差はよく補正されているということになるだろう。フィールドフラットナーはこの像面湾曲を補正するためのレンズで高級機種には採用しているものがある。

個別に評価する場合は、コマ収差と非点収差は明るい点光源があれば評価しやすい。最近は白色LEDを等間隔に一列に並べて陳列棚を照明していることがあってこれを対象にすると結構確認しやすい。歪曲収差は格子状の模様とか陳列棚の柱や棚の直線や直角を利用して確認できる。それから等間隔に並んでいる白色LEDでもその間隔が中心部と周辺部で違うかどうかでも評価できる。歪曲収差があると視野の中の対象の位置を右から左へ動かす(視野を振る)と形が変わっていくために眩暈がしたような感じになって気持ち悪いという人もいる。ただ天文用途に限っていえば、天体で歪曲収差が分かるような対象は月面くらい。それよりは周辺で暗い星がボケて見えなくなってしまう非点収差や像面湾曲を補正してくれるほうがうれしいかも。

色収差

色収差には2種類があり、紫藍青緑黄橙赤の各色でピントの合う位置が違うというのが視野の中心でも生じる軸上色収差、それと視野の周辺で色によって倍率が異なるために色ズレが起こるという倍率色収差の2つに分かれる。ちゃんとした双眼鏡なら対物レンズはアクロマートで、この場合、赤(C線、天文的にはHα線といってもいいが)、と青(F線、天文的にはHβ線といってもいい)の二色で軸上色収差がゼロになるようになっている(この場合一番ピントがずれるのは紫色なので明るい物体の縁に紫のにじみ=パープルフリンジができる)。これ以上の補正をするならEDレンズが必要だが、お値段は跳ね上がる。倍率色収差についてはデジタルカメラでは画像処理エンジンで除去したりしているのでレンズの方で補正しきるのは難しいのかも。

色収差の評価は明暗のコントラストがはっきりしたものでやるのが分かりやすい。屋外だと電線とかあまり高度が高くない太陽に照らされた碍子なんかが人気、天文用途では月を観察対象にしたときに月の縁を見るのが一番分かる。店内では蛍光灯の縁なんかで確認していたのだけれども、上でも述べた白色LEDを一列に並べた照明が確認しやすい。白色LEDにピントを合わせたときに紫っぽくにじんで見えるのが色収差で、この紫色っぽさが少なければ少ないほどよい。倍率色収差は同じように白色LEDを視野の周辺の方で見れば青と赤が色ずれを起こして評価できるのだが、無理に対象を視野の端で見ようとすると目の位置が適正位置からずれてそれだけで色収差が増幅されて見えやすいように思う。そのために再現性があまりないので、店内でうまく評価するのは困難かもしれない。

透過率

対物レンズで集めた光をいかに無駄にせずに目まで送れるか、というのが透過率。しかし透過率を直接評価するのは大変。なので逆に考えてみる。透過しなかった光はどうなるか?反射されるか、吸収されるというわけ。光学用ガラスを使ったちゃんとした双眼鏡なら吸収は無視してもよいだろう、と考えられるので、反射光の少なさ=透過率の高さという理屈。双眼鏡のレンズやプリズムは反射を減らすためにコーティングがされていて、特に可視光線全体を満遍なく反射しないようにするためには多層コーティング(マルチコート、普通は屈折率の低い層の間に屈折率の高い層を挟むらしいので、層の数は奇数になって3層コート、5層コート、7層コート…となる)がされている。で、マルチコートが反射が起こりうるガラスと空気の接触面すべてに施されているのがフルマルチコート(あるいはフーリーマルチコートとか。メーカーによって名称に違いあり)と、この辺はカタログにも書いてある。が、同じマルチコートでもどれだけ反射を抑えられているかは結構違ったりするもの。ちなみにガラスと空気の接触面は対物レンズで最低2面、プリズムで2面、接眼レンズで最低4面あるので各面での反射率が4%(これはコーティングなし相当)だと透過率は0.96^8=72.1%、反射率1%(ちゃんとしたコーティングがされている)だと透過率は0.99^8=92.3%とそれなりに大きな違いが出る。また反射した光が再反射して目の方にやってきてしまうとフレアやゴーストとなってコントラスト低下の原因になるので、数字以上に効いてくるところもあるような気がする。

評価の方法は、対物レンズ(ちゃんとした双眼鏡ならレンズ2枚以上からなる)、接眼レンズ(ちゃんとした双眼鏡ならレンズ3枚以上からなる)に店内の蛍光灯を映してみると、それぞれの構成レンズの面で反射した蛍光灯の像が見えるはず。はっきりと白い蛍光灯の像が見える面がある場合、コーティングされていない反射の強い面があるということ。単層コーティングの場合は普通は昼間にヒトの目の感度が一番高い波長(555 nm)が反射しにくいように調整されている。そうすると長波長側(赤色光)は人間の目に見える範囲(700 nm付近まで)はいい感じにカバーできるが、短波長側(青色光)では440 nmくらいまでしかカバーできないので、青紫色の反射が少し残ってしまう(なのでマゼンタコートと呼ばれる)。多層コーティングの場合には、設計思想によっていろいろなパターンがあって単純な場合には暗い緑の反射だけが見える場合や、いろいろな色の像が見える場合(おそらく色ごとの反射率を均一にして色の再現性を重視する設計)がある。色のパターンは様々だけれども、反射の像が暗いほど透過率が高いということになる。プリズム入口のコーティングは対物レンズ側から注意深く角度を調整して反射させると筒の中で円形に反射するところがあって、それがプリズムによる反射光なのだが、ペンライトみたいなものを用意して、対物レンズの直近から照らして反射させた方が分かりやすいかもしれない。

なお透過率には波長(色)依存性があるので、特定の色の光が透過しにくいということもあり得る。双眼鏡の波長(色)ごとの透過率を見てみると620nm近辺(橙色)が最大になっているものが多く、これに対して450nm付近(青色)より短波長の透過率が機種によって差があるようで、青色の透過率が悪いと白色のものが黄ばんで見える、ということになる。この原因の一つとしては、ダハプリズム型の場合限定ではあるが、全反射できないハーフペンタプリズム面に金属膜コーティングや誘電体多層膜コーティングが施されているが、この素材によって反射率の波長依存性が異なることがあげられる。アルミコートは反射率は高くない(88~92%くらい)が、波長依存性がほとんどないのに対して、銀コートは400nm以上ではアルミより反射率が高いが、逆に400nm以下ではアルミより反射率が下がる。つまり青色が透過しにくい傾向がある。誘電体多層膜コートは設計によって反射帯域が変わってしまうが、普通は高級機に使われるものなので可視光の範囲で反射率が低い帯域が出るものは無いと考えてもよいと思われる。金属コートと誘電体多層膜コートを組み合わせて波長特性と反射率を弄る方法もあるらしいが、そういうコーティングがされた機種があるのかは不明。着色の評価については白い面積体を見て確認するくらいしかないが、サイドバイサイドで比較してみないと分かりにくい。

迷光除去処理

視野内に見えている光源以外からの光や、レンズやプリズムの表面で反射してしまった光(総称して迷光と呼ばれる)は、ゴーストやフレアになったり、視野全体に拡散してコントラストを下げたりするので、そういった光が目に届かないようにする必要がある。普通とられる対策は対物レンズとプリズムの間の筐体の内壁に反射を防止する措置を取ることで、溝を掘ったり、表面を荒くザラザラにした後で、そこにつや消しの黒色塗料を塗ってプリズムの方になるべく反射した光が向かわないようにしている。この他にレンズやプリズムの側面(コバ)を黒く塗装して、その面で迷光が発生しないようにするといった方法もあるが、そこまでやっている機種は少ないと思われる。

機器自体を見ての評価としてはまず対物レンズ側から見てどのくらい溝や面の加工がされているかを確認する。次に筐体の内壁を照らして白く反射するところがないかを確認する。溝の角が光っていたりするとちょっとマイナス(溝が無いよりはマシだが)。次に接眼レンズから20cmくらい目を離したまま明るい光源に双眼鏡を向ける。そうすると光源からの白い丸い像(瞳とよばれる)が中心に見え、その周りが暗く見える。よく見ると暗い中に筐体の内部のパーツが光源からの迷光を反射して見えているはず。この暗い部分が暗ければ暗いほど、迷光が目の方に来ていないということになる。実際に観察しての評価としては蛍光灯の器具に書いてある文字や記号を読んでみるといいかもしれない。蛍光灯を直接視野に入れるということはフレアを意図的に発生させるような状態なので、その中で文字や記号がフレアに埋もれずに読めるということはそれなりに対策がされているといえる。

口径食(周辺減光)

対物レンズの正面から入った光(つまり視野中心に見える物体から来る光)は無駄なく目に届くようになっているが、斜めから来る光(視野周辺に見える物体から来る光)は必ずしもそうとはいえない。一部の光が目に届いていないことがしばしばある。顕著な例として、プリズムに安価な硝材のBK7を使用した場合がある。BK7の赤色光(C線)に対する屈折率は1.51385なので、全反射の臨界角は41.34度。プリズムへの入射時の屈折も考慮すると5.54度以上の角度で入射する光はプリズムで全反射せずに目まで届かない光となってしまう。青色光(F線)では屈折率が1.52190なので、臨界角が41.08度となり、5.98度まで全反射できる入射光が広がる。この結果、BK7のプリズムを使った双眼鏡では視野の周辺に赤色光が目に届かず、青色に見える部分ができてしまう。なお、これは対物レンズのF値が5.15より大きい場合で、5.15より小さい場合は正面から入った光でもレンズの端を通る光は屈折されて5.54度以上の角度でプリズムに入ることになるので目には届かず、口径を絞って使っているのと変わらない状態になってしまう。硝材がBaK4であれば、屈折率がC線で1.56575、F線で1.57591となるので、C線でも臨界角が39.69度となり、8.33度まで全反射できる入射光が広がる。限界F値も3.42まで大きくなる。(つまり広視界にしたり、焦点距離の短縮=小型化・軽量化するにはBaK4が必須)

さて斜めから来る光を無駄なく目に送るためにはプリズムの大きさも重要になる。口径5cm焦点距離200mmの対物レンズから50mm離れたところにプリズムを置いて、正面から入った光だけを無駄なく集める場合、対物レンズからの光束の直径は3.75cmなのでそれだけの大きさのプリズム面があればいいが、実視野として7.0度角確保しようとすると3.5度傾いて対物レンズに入ってくる光まで受ける必要がある。そうするとざっくりとした計算では光束の直径は4.38cmくらいまで増える。長さとしては17%増しだが、プリズムの体積つまり重量としては3乗になり59%増しになってしまう。プリズムはガラスの塊で双眼鏡のパーツの中では一番重い部分なので、軽量化の上では邪魔になる。なので軽量化をはかる場合、あえて視野周辺で光のロスが起こることを承知の上でプリズムを小さくする手段がとられることがある。

口径食をどれくらい起こしているかの評価は、対物レンズを厚紙や手などで少しずつ下から上に覆うように隠していき、どのくらいまで行くと視野の一部が欠けるか、というので評価できる。とりあえず手元のある双眼鏡は半分くらい隠したところで視野の端が欠けるくらいのようだ。視野の端で半分が口径食されているとすると、そこでは極限等級が0.76等悪くなることになる。小さいプリズムのまま実視界を欲張ったとか、そういうスペックでない限りはあまり気にしなくてもよさそうではある。

わたしを見て

はじめに

 明るく大きいにもかかわらず、ちかくに有名な星団/星雲があるために目を向けられないという不幸な星団/星雲たちを集めてみました。かわいそうな彼らを見てあげてください。

§1 散開星団

 あまり該当する天体がない…。明るいものはそれなりに有名ということか?

NGC752
 アンドロメダ座の散開星団。近くに北半球の2大銀河であるM31、M33があっては注目されるわけがない。視直径45’、等級7.0、星数70という立派な散開星団。大きいので望遠鏡では見ないでください。
M93、NGC2477
 とも座の散開星団。M46とM47が上にあるが、どちらかといえば高度の点で不幸なのだろう。もっともそれほど低いわけではなくM93はおおいぬ座の腰?くらい、2477もはと座くらいの高さはある(ちょうど夏のM7と同じくらいの高さ)。どちらも密集した散開星団で等級は6等より明るい。
M67
 かに座の散開星団。近くに同じ散開星団でも桁違いに明るく大きいM44プレセペがあってはさすがに影も薄い。視直径こそ18’と小さいが、等級6.1、星数65と散開星団が少ない春にしてはかなり立派。
NGC7789
 カシオペア座の散開星団。やはり東の二重星団がかなり効いているのか?等級こそ暗いがそれは暗い星がびっしりとつまっているせい。ぎょしゃ座のM37に感じが似ている。M37よりも暗いが、大きさと星数はこちらの方が上。

§2 球状星団

 球状星団にはメシエ天体にもかなり不幸なものがある。どれを見ても同じなんていわないで見てやってください。

NGC1851
 はと座の球状星団。冬の数少ない球状星団の1つである。うさぎ座のM79よりも明るく大きいが、やはり低空にあるのが不幸の原因。
M3
 りょうけん座の球状星団。それほどマイナーな扱いをされているわけではないが、いちおう書いておく。
M5
 へび座(頭部)の球状星団。M13のせいか、それとも位置が悪いのか、どちらにせよかなり損をしている星団である。密集度はM13と同じくらいだが、星が少し片寄っている(ちょうど尾の短い彗星のような形)のでM13ほど均整がとれていない。
へびつかい座の球状星団たち
 へびつかい座には全部で7つのM球状星団がある(全部言えたらほめてあげよう)。その中で大きいのがM10とM12である。M12はかなりまばらであり、M10はそれよりは密集している。一方M9という明らかに楕円形につぶれている球状星団もあり興味深い。
M92
 ヘルクレス座の球状星団。間違いなくM13のせいで不幸な目にあっている星団。M13よりも密集していて中心がよく輝いているのが分かる。
M55
 いて座の球状星団。いて座のなかでも天の川からはずれた東のほうにあるので忘れられているのだろう。非常にまばらな球状星団であり、中心まで星に分解して見ることが比較的容易と思われる。

§3 惑星状星雲

 惑星状星雲では一般に無名なものは暗くて小さい。それでも何個か書いておこう。

M76
 ペルセウス座の惑星状星雲。これは12.2等などと書いてあるデータが悪い。実際はこれよりずっと明るく見える。写真では腕の短い棒渦巻銀河のような形をしているが、眼視では腕にあたる部分が見えずに、ややダルマ形の棒にあたる部分だけ見える。
NGC3242
 うみへび座の惑星状星雲。木星状星雲というのだが、私には天王星を超高倍率で見たもののような感じがした(緑色っぽいのだ)。
NGC7009
 みずがめ座の惑星状星雲。土星状星雲といい、丸い星雲から横に棒がでている形が分かるそうである。(写真でしか見たことがないの…)
NGC7293
 みずがめ座の惑星状星雲。らせん星雲というが、どこがらせんなのかよくわからない。全天で最大の惑星状星雲なのだが、そのぶん薄れていて非常に暗い。

§4 散光星雲

 散光星雲で無名なものはたいてい眼視では見えない。というわけでこのパートは写真向けです。

IC1805、IC1848
 カシオペア座の散光星雲。ただし位置は二重星団のすぐ北である。ふたつともM42くらいの大きさがあり隣接しているが、眼視ではまったく見ることができない。星雲を励起している散開星団は眼視で分かるがおもしろいものではない。
NGC2264
 いっかくじゅう座の散光星雲。バラ星雲から北に伸びるガスの流れがふたご座といっかくじゅう座の境界付近で再び濃くなった部分。青い星雲と赤い星雲が入り乱れている。
ガム星雲
 ほ座の超新星残骸。90×40度という全天で最大の大きさをもつ星雲である。しかしあまりに大きいために南半分は日本では撮影不可能。構造ははくちょう座の網状星雲によく似ている。中心にはほ座パルサーがある。
へびつかいζ付近
 へびつかい座の散光星雲。多くの星図には描かれていない。しかし直径8度くらいの巨大な円形の散光星雲である。
IC1318
 はくちょう座の散光星雲。デネブとγ星の西側(北アメリカ星雲のあるのと反対側)に大きく広がるガスの流れである。
IC1396
 ケフェウス座の散光星雲。ちょうどM20三裂星雲のような感じで暗黒帯が走っている。

§5 系外銀河

 系外銀河は数が多いので調べてみるとけっこう明るく大きいものがM天体から落ちていたりしておもしろい。

NGC55、253
 どちらもちょうこくしつ座の系外銀河である。2つともM33につぐ明るさをもっている(7等台)。しかし南に低いので(特に55は)みづらい。どちらも渦巻銀河を斜めから見たものである。
M74
 うお座の系外銀河。フェイスオン(上から見た)銀河である。M51やM101とは渦巻が逆になっている。もっともこれは写真でないと分からないと思う。
NGC2403
 きりん座の系外銀河。ちょうどM33を小さくしたような感じで見える。
NGC2903
 しし座の系外銀河。しし(ネコ科)の額のところにある。やはり斜め方向から見たものである。ししの後ろ足の下の方にある3521もGood。
M106
 りょうけん座の系外銀河。M81、82やM51のせいでかなり不幸。周辺部が淡いので空が悪いとかなり小さく見えることがある。
NGC4565
 かみのけ座の系外銀河。あまり明るくはないが典型的なエッジオン(横から見た)銀河であるので書いた。同じようなエッジオン銀河で有名なのはアンドロメダ座のNGC891だがこちらはかなり暗いと思う。
NGC4631
 りょうけん座の系外銀河。エッヂオン型のはずだがバルジのふくらみや暗黒帯は分からないので無構造に見える。なお写真では伴星雲NGC4627の存在がはっきり分かる。
M64
 かみのけ座の系外銀河。渦のなかに暗黒部が存在することから黒眼星雲とよばれる。おそらくかみのけ座とおとめ座の系外銀河の中では一番明るいほうだろう。
NGC5128
 ケンタウルス座の系外銀河。ω星団の少し北にある。7等台で明るいはずなのだが南に低いためにかなり見づらい。大きな暗黒帯が円形の銀河を横切っている特異な姿は有名。でも見づらいから見ない人が多いと思う。不幸だ。

あとがき

星はいいねぇ。
 星は人の心を潤してくれる
 宇宙の生み出した文化の極みだよ
 そう感じないか?

メシエマラソン

 えー、これだけでは何のことかさっぱり分からない方のために解説しますと「メシエマラソン」とはシャルル・メシエという昔の人が作ったカタログに載っている約110個の星団・星雲(この中にはアンドロメダ大星雲M31やオリオン座大星雲M42やウルトラマンのふるさとM78などが含まれます。)を一晩の間になるべく多く(できればすべて)見るというまったくもって酔狂な企画のことであります。1年のうちでメシエ天体すべてを1晩で見ることが可能になるのは3月末から4月始めのわずかな期間だけです(それ以外では太陽に近すぎる星雲・星団があるので無理)。でもこの時期って天気が悪いことが多いしねぇ。

夢幻の南天星

(日本の貧乏な)多くの天文屋の夢である南天星たち。行きたいですね~、オーストラリア(ニュージーランドや南米も可)。ここではそこいらの本に載っている天体写真とデータを元に日本からは見ることが出来ない南天の星団・星雲の見どころを集めてみました。

NGC104 きょしちょう座47番星
 小マゼラン雲のそばに見えるきょしちょう座の球状星団。ケンタウルス座のω星団と同様に肉眼で確認でき、恒星と誤認されたため恒星としての番号がある。
SMC 小マゼラン雲
 きょしちょう座とみずへび座の境界に広がる銀河系の伴銀河のひとつ。
LMC 大マゼラン雲
 かじき座とテーブルさん座の境界に広がる銀河系の伴銀河のひとつ。
NGC2070 タランチュラ星雲
 大マゼラン雲内部にある大散光星雲(といっても距離が距離なのでM42の1/3くらいの大きさにしか見えないが)。
NGC2516
 りゅうこつ座ε星の近く、天の川から外れたところにある散開星団で肉眼でも確認できる。
NGC3114
 η・カリーナ星雲の周辺にある散開星団の1つ。明るい星がまばらに集まっているので双眼鏡の対象。
IC2602
 南天のプレアデスとも呼ばれるη・カリーナ星雲の周辺にある散開星団の1つ。青色の明るい星がまばらにあつまっているところがプレアデスと似ている。
NGC3372 η・カリーナ星雲
 りゅうこつ座η星の周囲に広がる全天で最も明るい散光星雲。
NGC3532
 η・カリーナ星雲の周辺にある散開星団の1つ。こちらは微光星が密集しているタイプ。
NGC3766
 ケンタウルス座の散開星団で下のこうもり星雲のすぐ北にある。密集したタイプ。
IC2944 こうもり星雲
 ケンタウルス座の後足の部分にある。明るいところがバットマンのマークみたいなのでこうもり星雲と呼ばれる(ちなみにオリオン座大星雲もこうもり星雲と呼ばれることがある)。写真でしか確認できないと思われる。
NGC4755 ジュエルボックス
 みなみじゅうじ座β星のそば、コールサック暗黒星雲のすぐ北にある散開星団で明るい星が密集している。
NGC5139 ω星団
 ケンタウルス座の球状星団。肉眼で確認でき、恒星と誤認されたため恒星としての番号がある。日本からも普通に見えるが空高く昇る南天で見ると迫力が違うということで敢えてここに掲載。
NGC5822
 おおかみ座の南端にある散開星団。かなり大きく広がった散開星団で双眼鏡の対象。
NGC6067
 じょうぎ座の天の川が最も濃くなったところにある散開星団。密集タイプ。
NGC6167
 じょうぎ座とさいだん座の境界にある散開星団。微光星の密集タイプ。このすぐ北東に散開星団NGC6193と散光星雲RCW108の組み合わせがあって写真ではそっちの方が見どころ。
IC4651
 さいだん座α星の近くにある散開星団。微光星の密集タイプ。
NGC6397
 さいだん座の球状星団。集中度が低いので比較的容易に中心まで星に分解できる。
NGC6752
 くじゃく座の球状星団。集中度はそれほど高くない。